「抗菌薬が効かない」百日咳が流行している? 百日咳を防ぐためにできることとは。

最近流行している百日咳は特に赤ちゃんにとって危険な感染症です。そして近年、治療薬が効きにくい「耐性菌」が世界で問題になっています。そこで、百日咳の基本知識から治療法、そして家族を守るための方法までを分かりやすく解説します。
堀向健太 2025.04.20
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百日咳ってどんな病気?

百日咳は、百日咳菌という細菌が引き起こす呼吸器の感染症です。この病気は16世紀から記録されている古い病気ですが、その時点では原因はわかっていなかったのです[1]。
そして1906年にベルギーの科学者たちが百日咳菌を発見し、これが病気の原因だと判明しました[2]。

そして、現在、その百日咳が大きな流行をし始めています

東京都感染症情報センター

東京都感染症情報センター



百日咳は、感染した人の咳やくしゃみの飛沫を吸い込むことでうつります。
百日咳は、免疫がない人が家庭内で感染者と接触すると、80%以上の確率で感染すると考えられています[3]。感染力、めちゃくちゃ強いですね。

病気がうつる可能性がある期間は、風邪のような症状が出てから、治療しなければ特徴的な咳が始まって約3週間後までです[4]。「適切な抗菌薬を使用しても、咳を収める効果が乏しい」のが難しいところですね…

ただし、適切な抗菌薬で治療すれば、うつる期間は約5日間に短くなります。

子どもにとって特に危険な理由

ワクチンが広まる前は、百日咳は世界中で子どもの命を奪う病気の一つでした。

1940年代にワクチンが導入されるまで、たとえば米国でも、百日咳が小児死亡の主な原因でした。年間115,000~270,000人が罹り、5,000~10,000人が亡くなっていたと報告されています[5]。
そして、日本でも第二次世界大戦後頃には年間10万人以上の患者さんがいて、約10%が亡くなるという高い死亡率だったのです。

とても恐ろしい感染症ですね。

現在でも、特に1歳未満の赤ちゃん、その中でも生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、百日咳が重症化しやすく、リスクが高いことがわかっています。
米国疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、1歳未満で百日咳になった赤ちゃんの約3分の1が入院し、入院した赤ちゃんには呼吸が一時的に止まる発作(約68%)、肺炎(約22%)、けいれん(約2%)などの合併症が報告されています[7]。

小さな赤ちゃんでは、特徴的な咳の代わりに、呼吸が止まる発作や皮膚・唇の色が悪くなる(チアノーゼ)、母乳やミルクをうまく飲めないなどの症状が起こることもあります。百日咳っぽい咳が少なければ、診断を思いつくことも難しいですよね。

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続きは、5452文字あります。
  • 百日咳ワクチンの歴史
  • 抗菌薬治療薬「マクロライド系抗菌薬」
  • 特効薬であったはずのマクロライドの効果がない?耐性菌の問題
  • 百日咳から家族と子どもを守るには
  • まとめ
  • 参考文献

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