接種歴不明…麻しん(はしか)のワクチンはどうしたらいい?
2026年の日本。麻しんの国内報告が前年同時期を大きく上回りました。
世界でも2024年に推計1,100万件の感染、9万5,000人の死亡が報告されています。
母子健康手帳が見つからないとき、抗体検査を先にするのか、MRワクチンを検討するのか。結論は「記録を探し、なければ禁忌を確認して接種を検討」です。[1][2]
なぜなのでしょうか。
外来のあと、A先生が少し困った顔で相談に来ました。「子どもの頃にはしかにかかった気がする」「母子健康手帳がない」「抗体検査をしてから接種したほうが無駄がないのでは」。どれも現場でよく聞く言葉です。

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ほむほむ先生は、麻しんの感染力、免疫の記憶への影響、日本の接種制度の世代差、抗体検査の使いどころを順に整理しながら、接種歴不明時の考え方を確認していきます。
本記事を最後まで読めば、
・接種記録をどう確認する?
・抗体検査はいつ役立つ?
・直接接種を避ける人は?
これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。
まず、麻しんはどれくらい感染しやすいのか

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A先生「先生、ちょっと聞いてください。外来で“子どもの頃にはしかにかかったかもしれないけれど、母子健康手帳がないんです”って相談されました。抗体検査を先にするのか、MRワクチンを勧めるのか、答えに詰まってしまって…」
ほむほむ先生「良い質問だね。まず出発点として、麻しんは“昔の病気”ではないんだ。日本は2015年に麻しん排除状態と認定されたけれど、排除というのは“海外から入ってきても広がりにくい状態を保つ”という意味で、ウイルスが地球上から消えたという意味ではないんだよ。[1]」
A先生「排除と根絶は違う、ということですね。」
ほむほむ先生「その通り。2026年になって麻しんはどんどん増えていて、国内感染例も輸入例もあるし、医療機関、家庭、学校、施設での感染事例も報告されているんだ。[1] 世界に目を向けても、2024年には推計1,100万件の麻しん感染と9万5,000人の死亡が報告されている。ワクチンで死亡は大きく減ってきたけれど、免疫の空白ができると、麻しんはすぐに入り込んでくるんだ。[2]」

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A先生「やっぱり感染力が桁違いなんですね。」
ほむほむ先生「麻しんは空気感染、飛沫感染、接触感染で広がる。総説では基本再生産数、つまり1人の感染者が免疫のない集団で平均何人に感染させるかが12〜18程度とされることがある。インフルエンザや新型コロナの多くの状況と比べても、かなり高い数字だね。[3]」
A先生「同じ空間にいるだけで感染し得る、という説明が大げさではないんですね。」
ほむほむ先生「うん。だから、麻しんでは“発症してから気をつける”では遅いことがある。ワクチンであらかじめ免疫を作っておくことが、いちばん現実的な予防なんだ。」
麻しんが「免疫の記憶」に触れる理由

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A先生「麻しんにかかると免疫の記憶が失われる、という話を耳にしました。“免疫のハードディスクが初期化される”みたいな表現で、かなり強烈でした。」
ほむほむ先生「印象に残るよね。ただ、ここでは少し表現を整えようか。正確には、麻しん感染後に、過去に出会った病原体への抗体や免疫記憶の一部が減る可能性がある、ということだね。」
A先生「それが“免疫健忘(免疫アムネジア)”ですか?」
ほむほむ先生「そうだ。2019年のScienceの研究では、未接種の子ども77人を麻しん感染前後で調べ、過去に作られた抗体のレパートリー、つまり“覚えてきた病原体のリスト”の11〜73%が失われたと報告された。MMRワクチン接種では、同じような抗体レパートリーの低下は見られなかったんだ。[4]」
A先生「11〜73%…幅はありますけど、最大値だけでなく下限でも無視できませんね。」
ほむほむ先生「A先生の言う通り。別のScience Immunologyの研究では、麻しん後に、病原体を記憶して守ってくれるはずのB細胞のレパートリーが完全には戻らないことが示されている。本来は免疫を支える細胞自体が、麻しんウイルスに削られてしまうんだ。[5]」

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A先生「本来は病原体を覚えて守る細胞が、麻しんに狙われる側にもなるということですか?」
ほむほむ先生「そういう理解で合っているよ。さらに、人口レベルの解析では、麻しん流行後2〜3年にわたり、麻しん以外の感染症死亡と関連する可能性も示されている。ただしこれは観察研究だから、“すべての人で必ず2〜3年弱る”と断定する話ではないけどね。免疫への影響を軽く見ないための根拠として受け止めるのがよいだろう。[6]」
A先生「“かかって免疫をつければいい”という言い方が、かなり危うく見えてきます。」
ほむほむ先生「まさにそこなんだ。麻しんの予防は、麻しんだけを防ぐ話ではない。免疫の記憶を守る話でもあるんだよ。」
接種歴が曖昧になる日本の事情

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A先生「でも、接種歴が分からない大人が多いのは、本人の管理不足だけではないですよね。」
ほむほむ先生「その通り。現在の日本では、MRワクチンを第1期として1歳の1年間、第2期として小学校入学前の1年間に接種する。2回接種が基本だね。[7]」
A先生「今の子どもたちは2回の機会がある。でも大人は世代によって違う、ということですね。」
ほむほむ先生「そうそう。厚生労働省は、2000年4月2日以降に生まれた人は、現行スケジュールに基づき2回の麻しん含有ワクチンを受ける機会があると説明している。さらに、2008〜2012年度には中学1年相当(第3期)と高校3年相当(第4期)を対象とした時限的な追加接種が行われ、1990年4月2日〜2000年4月1日生まれの世代にも2回目の機会が設けられた。一方、1990年4月1日以前に生まれた世代では、定期接種としての機会が1回のみ、または機会がなかった人もいるんだ。[7]」

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筆者作成

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A先生「つまり、母子健康手帳や記録があるかどうかで、判断のしやすさが変わるということですね。」
ほむほむ先生「うん。それから、親御さん世代からは“昔はしかにかかったよ”と言われた、という話もあるよね。でも昔は、発熱と発疹の見た目だけで“はしか”と言われたこともあった。風しん、突発性発しん、ほかのウイルス性発疹症だった可能性もある。記憶や口頭での証言だけで“免疫あり”とは判断しにくいんだ。」

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A先生「確実なのは、母子健康手帳や接種済証のような文書記録、検査で確認された感染歴、または抗体検査などの客観的な根拠ですね。」
ほむほむ先生「その通り。CDCも、医療者向け推奨で、文書記録なしの口頭の接種報告は免疫の根拠として受け入れないとしている。まずは文書記録を探す。ここが第一歩だね。[8]」
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ここまでが、接種歴不明時の判断の「土台」です。
ここから先は、抗体検査の使いどころ、修飾麻しん、接触後72時間ルール、コクーン戦略、そして2026年の国産MMRワクチンまで、現場で本当に役立つ内容を一気にお話しします。
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- 抗体検査は便利。でも万能ではない
- 記録がなければ、健康な人は接種を検討
- 直接接種できない人を、周囲で守る
- 新しいMMR(麻しん・おたふくかぜ・風しんワクチン)の話題と、今すぐの行動
- まとめ
- 参考文献
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