去年の日焼け止め、まだ使えますか?

夏が近づくと気になる「去年の日焼け止め」問題。まだ残っているからと、今年も使ってよいものか悩んでいませんか?そこで今回は、研修医の素朴な疑問に答える形で、小児科専門医が日焼け止めの寿命とリスクを解説しました。正しい知識で、あなたと家族の肌を紫外線から守りましょう。
堀向健太 2025.06.19
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小児科・アレルギー科専門医として診療を行う「ほむほむ先生」。その傍らで、熱心に学ぶ研修医のA先生がいます。 ある日の午後、A先生が少し困った顔で、ほむほむ先生に話しかけました。

「先生、この前の診察で、赤ちゃんの肌が日焼けで赤くなっているお母さんから『去年の日焼け止めを塗ったんですけど…』って相談されたんです。なんて答えるのが正解か分からなくて…。そもそも、古い日焼け止めって効果あるんでしょうか?

「A先生、良い質問だね。それは多くの人が疑問に思うことだよね。では今日は、その疑問を解き明かしていこうか。」

本記事を最後まで読めば…

・日焼け止めの種類で劣化のしやすさは違うの?

・冷蔵庫や車での保管であれば、日焼け止めは持つの?

・効果が落ちるだけじゃない、怖いリスクって?

これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。

日焼け止めの「鮮度」とは?

ChatGPTで作画

ChatGPTで作画

A先生「よろしくお願いします!まず、日焼け止めの種類によって違いがあるのか気になります。紫外線を吸収する化学的なタイプと、反射させるミネラルタイプがあると習いましたが…。」

ほむほむ先生「うん、そこから始めるのが分かりやすいね。まず、スポンジみたいに紫外線を吸い取ってくれる『紫外線吸収剤』タイプ。これは残念ながら、光自体に弱いという性質があるんだ。」

A先生「光に弱い、ですか?」

ほむほむ先生「そう。例えば『アボベンゾン』という成分は、製品にもよるけど、紫外線に1時間当たるだけで効果が半分以下に落ちてしまうという研究もあるくらい、繊細な成分なんだよ[1]。」

A先生「えぇっ!たった1時間で!?じゃあ、真夏にビーチで使っていたら、あっという間に効果が薄れる可能性もあるんですね…。ショックです。」

ほむほむ先生「そういうことだね。さらに、時間が経つと成分そのものが別の物質に変化してしまう可能性も指摘されている。例えば『オクトクリレン』という成分は、年月が経つと『ベンゾフェノン』という物質に変わることがある。これはアレルギーの原因になる可能性が心配されていて、注意が必要なんだ[2]。」

A先生「なるほど…。では、物理的に紫外線を跳ね返す『紫外線散乱剤』、つまりミネラルタイプなら、その心配は少ないんでしょうか?」

ほむほむ先生「成分そのものは化学的にとても安定しているよ。ただ、問題は日焼け止め全体を構成しているクリーム、つまり『基剤』の部分。これが劣化してしまうと、ミネラルの粉が均一に肌にのらなくなって、結局“塗りムラ”ができて効果が落ちてしまうんだ[3]。お豆腐が古くなると水分が出てきてボソボソになるようなイメージかな。」

A先生「ああ、なるほど!成分が無事でも、土台が崩れたら意味がないんですね。たしかに。」

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続きは、3902文字あります。
  • 保管場所が運命の分かれ道!その置き場所、本当に大丈夫?
  • SPF50のはずが…「塗り方」で効果が激減する衝撃の事実
  • 効果だけじゃない!古い日焼け止めに潜む「肌へのリスク」
  • 去年の日焼け止めは「何もしないよりマシ」レベル?
  • まとめ
  • 参考文献

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