夏の子どもの肌荒れ、犯人はカビかも!?「マラセチア菌」との上手な付き合い方

夏になると気になる、子どものあせもや繰り返す肌荒れ。実はその原因、誰の肌にもいる「マラセチア」というカビ(真菌)かもしれません。普段はおとなしいこの菌が、夏の汗や皮脂で増殖すると、様々な肌トラブルを引き起こすのです。今回は、マラセチアの正体と、お子さんの肌を健やかに保つための正しい付き合い方を解き明かします。
堀向健太 2025.06.27
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蒸し暑い午後、小児科の診察室。研修医のA先生は、サッカー部のユニフォームを着た思春期の男子生徒を診察していました。

「背中と胸のブツブツが、市販のニキビ薬を塗っても全然良くならなくて…」 付き添いのお母さんも心配そうです。A先生はニキビの一種だと考え説明していましたが、薬への反応の悪さから、内心では「本当にただのニキビだろうか…」と迷いが生じていました。

その時、診察室の様子を静かに見ていた指導医のほむほむ先生が、A先生にそっと目配せをし、診察室の隅へ手招きしました。
「A先生、ちょっといいかな」 患者さんには聞こえないよう、ほむほむ先生は小声で囁きます。
「あの子の症状、確かにニキビもあるけど、汗をかくこの時期に胸や背中に広がる赤いポツポツは、『マラセチア毛包炎』を疑ってみるといいかもしれない。あとで詳しく話すから、患者さんには『汗が原因の肌荒れかもしれないから、お薬を変えてみましょう』と、不安にさせないように伝えてみてごらん」

診察に戻ったA先生は、教わった通りに丁寧に説明し、新しい薬を処方しました。安堵した表情で帰っていく親子を見送りました。その日のすべての診察が終わった後、A先生はほむほむ先生のデスクを訪ねました。

本記事を最後まで読めば、 これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。

・どうして夏に子どもの肌は荒れやすいの?
・肌トラブルの原因「マラセチア菌」って何?

・お家でできる夏のスキンケアのコツは?

子どもの肌は、なぜ夏に弱い?

ほむほむ先生「今日の診察、お疲れ様。」

A先生「先生、お疲れ様です!先ほどは診察中のフォロー、ありがとうございました。一人では、ニキビの治療を漫然と続けて、患者さんを余計に不安にさせてしまうところでした。」

ほむほむ先生「いやいや、あの場面で『何か違うかもしれない』と迷えること自体が、成長の証だよ。では、マラセチアの話をしようか。」

A先生「はい!ぜひお願いします!」

ほむほむ先生「じゃあ、まず根本的なところからいこう。そもそも、どうして特に“子どもの肌”が夏の影響を受けやすいと思うかな?」

A先生「はい。子どもの皮膚は大人よりずっと薄くてデリケートだということですよね。バリア機能もまだ未熟ですし…。」

ほむほむ先生「その通り!そのデリケートな時期に、夏の厳しい環境が追い打ちをかけるということだね。」

『ほむほむ先生の医学通信』では、医療の前線で25年以上診療に従事しながら様々な学会で委員を務める小児科医が、医学知識をわかりやすく解説しています。
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続きは、5493文字あります。
  • アレルゲンを含んだ“汗”の正体
  • 肌トラブルの犯人?「マラセチア菌」の意外な素顔
  • ニキビと違う?マラセチア菌が引き起こす肌トラブル
  • バリア機能の低下が引き起こす“負のスパイラル”
  • 夏を乗り切る!お家でできるスキンケア
  • 視点を変える:私たちの皮膚は「微生物の生態系」
  • まとめ
  • 参考文献

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