ノロウイルスにかかりやすい人とは?ノロに関するよくある質問にお答えします
最近、胃腸炎の流行が目立っています。
救急外来でも胃腸炎の症状を訴える方がとても多く、眠れない当直が多いですね。
さて、胃腸炎の原因のなかでも、ノロウイルスは非常に強い感染力を持つことで知られています。
ノロウイルスは、わずか十数個程度のウイルスを取り込むだけで症状が出ることもあり、しかも、一度に排出されるウイルスの量は便や嘔吐物に数億~数千億個にも達するため、集団生活の場で急速に広がるケースが多いです[1]。
たとえば、2017年の事例では、幼稚園のクラスにいた38人の子どものうち20人が、たった8.5時間以内にノロウイルスに感染しました[2]。閉鎖空間でのノロウイルスの感染力の強さを示していますね。
このように感染力が極めて強いノロウイルスですが、同じ環境にいても感染する人としない人がいるのは事実です。
もちろん、こまめな手洗いや消毒などの感染対策を徹底するかどうかで大きな差が出ますが、それだけでは説明できない不思議もありますよね。「なぜ友だちや家族はかかるのに、自分はかからなかったのか」という声も聞きます。
そこで近年注目されているのが、遺伝的要因や腸内環境など、いわゆる「体質」に関わる要素です。この記事では、それらがどのようにノロウイルスの感染リスクに影響を与えているのか、研究報告をもとにわかりやすく解説します。さらに、よくある疑問をQ&A形式で取り上げます。
ノロウイルスと血液型O型の関係

PhotoAC
ノロウイルスと血液型のかかわりは以前から指摘されており、2020年のメタ解析では「O型の人は、他の血液型(A・B・AB)よりも約1.3倍ノロウイルスにかかりやすい」という結果が得られました[3]。
なぜO型の人がややリスクが高いかというと、ポイントはヒト血液型抗原(HBGA)と呼ばれる構造にあります。ノロウイルスは、これを利用して細胞にくっつくと考えられており、O型の人が多く持つ「H抗原」は、複数のノロウイルスにとって結合しやすい足場になる可能性があるのです[4]。
H抗原とはなんでしょうか?
血液型は赤血球の表面にある抗原(体に入ってきた異物を見分けるための目印)によって決まります。ABO式血液型では、赤血球の表面にどんな抗原があるかによって、A型、B型、AB型、O型の4つに分けられます。
H抗原は、すべての血液型の「足場」になる物質です。この足場の上に、血液型によって違う糖がくっつくかどうかで血液型が決まります。O型の人は、A型やB型の人と違って、H抗原の上に別の糖をくっつける酵素を持っていません。そのため、O型の人の赤血球表面には、H抗原がそのままの形で残ります。
一方、A型やB型、AB型の人は、持っている酵素によってH抗原の一部が変化して、A抗原やB抗原になります。つまり、H抗原が「使われて」しまうのです。
これが、O型の人がH抗原を多く持つ理由です。そしてそのH抗原が、ノロウイルスの足場になるわけです。
ただし、「O型だから絶対にかかりやすい」「A型やB型、AB型なら安心」というわけではありません。なお、最近の研究では、B型の人は感染しにくいという報告もあるようですが、メタ解析ではA・B・AB型のリスク差は大きくなく、どの血液型でも油断はできないとされています[3]。血液型はあくまで一因といえます。
しかし、実はそれだけではありません。
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- 衛生管理も重要
- 腸内環境(腸内細菌叢)は影響する?
- よくある質問Q&A
- おわりに
- まとめ
- 参考文献
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