「この薬、もうやめてもいいよね?」AIの優しい答えを信じる前に

「この吸入薬、もうやめてもいいよね?」。そんな一言を、夜にそっとAIへ打ち込んだことはありませんか。米国では、減薬への不安をAIに158回打ち明けていた女性が亡くなり、両親が「AIの助言のせいだ」と提訴しています。優しくうなずくAIに、薬の判断を任せてよいのでしょうか。
堀向健太 2026.11.01
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たとえば、子どもを寝かしつけたあと。

「最近せきも出ないし、吸入薬、もうやめてもいいよね?」と打ち込んで、返ってきたのが「毎日続けるのは大変ですよね。症状が落ち着いているなら、減らすことを考えてもよいかもしれません」という優しい言葉だったら。
少しほっとして、その日から吸入をやめてしまうかもしれませんよね(AIの返答は説明のための例です)。

米国での、ある提訴が公表されたのは、2026年10月27日です。

訴状によると、てんかんのある31歳の女性は、ChatGPTと相談しながら抗てんかん薬を減らし始め、約4週間後の2月に亡くなりました。両親は、AIの助言が娘の死につながったと訴えています。

158回という数字は、ニューヨーク・タイムズが会話記録を分析し、減薬への不安を口にした回数を数えたもので、「少なくとも158回」と報じられています。[1][2][3]

訴状が名指ししたのは、GPT-4oというモデルです。

OpenAI自身が2025年春に、ある更新でユーザーに同調しすぎるようになったと認め、取り消したことのあるモデルでもあります。[2][4]

AIに薬のことを聞くのは、もう特別なことではありません。「薬を少なくできたら」「この不安をわかってほしい」という気持ちは、子どもの薬を毎日使う家庭にもあります。

この記事では、次の3つの疑問を一緒に考えます。

1. 「ゆっくり減らしたなら大丈夫」ではないの?

2. 薬に詳しいはずのAIが、なぜうなずいてしまうの?

3. AIを、診察室につなぐ味方にするには?

「せきが出ないから、もういいよね」から始まる相談

ChatGPT Image2.5で作画

ChatGPT Image2.5で作画

ここからの診察室の場面は、よくある相談をもとにした想定の会話です。

A先生「先生、ご相談です。ぜん息のお子さんの保護者の方が、『AIに聞いたら、症状がないなら減らしてもいいかもと言われたので、吸入薬をやめようかと思って』と話されていました。『やめてはいけません』と止めたほうがいいでしょうか?」

ほむほむ先生「ああ、AIに聞いたとまでは言われないにしても、よくある相談だね。止める前に、まず『いつまで続くのか、気になっていたんですね』と受け止めたいな。そのうえで、薬の変更は僕たちや主治医と相談してから、と伝えたほうがいいよね。ぜん息で毎日使う長期管理薬は、症状がないときも気道の炎症を抑えて、発作を予防するための薬なんだ。せきが出ないことだけで、もう必要ないとは決められないんだよ。[5]」

A先生「受け止めるのが先なんですね。毎日忘れずに吸入させるのが大変だったり、『ステロイド』という名前が心配だったりするのかもしれませんよね。」

ほむほむ先生「そうだね。診察が終わってから『あれも聞けばよかった』と思うこともある。そういうとき、AIなら気兼ねなく何度でも聞けるからなあ。うまく言葉にできない不安でも、根気よく付き合ってくれるしね。そこで『わかってくれた』と感じたことまで、否定する必要はないよ。僕は、薬を減らしたいという気持ちこそ、診察室で遠慮なく話してほしいと思っているんだ。」

ChatGPT Image2.5で作画

ChatGPT Image2.5で作画

A先生「でも、AIが理由まで添えて『減らしてもいいかも』と答えたら、研修医でも信じたくなりそうです……。」

ほむほむ先生「そこが今日のいちばんのポイントなんだ。『続けるのは大変ですね』と気持ちを受け止めることと、『では中止してよいです』と治療を判断することは、別の役割なんだよ。わかってもらえた安心だけでは、薬を変える根拠はそろわないんだ。」

A先生「つまり、何度でも聞いてもらえることが、そのまま安全の確認になるとは限らない、ということですね?」

ほむほむ先生「鋭いね。その二つが離れてしまったときに何が起こりうるのか。米国の訴訟を見てみよう。」

***

この先では、米国の訴状に記された経過と2つの研究を手がかりに、AIの答えを薬の判断につなげる前に、確かめたいことを考えます。
✅️薬の日程表が詳しくても、先に確かめる必要があること
✅️️薬に詳しいAIが、誤った前提にうなずいてしまう理由
✅️次の診察で伝えたい内容と、相談メモをAIに整理してもらう具体的な頼み方
「薬を減らしたい」「毎日続けるのが負担」「実は、もう回数を減らしている」。そんな気持ちや実際の使い方を、診察室でどう伝えればよいのでしょうか。
サポートメンバー向けの続きでは、ご家族が相談の準備に役立てられるよう、一つずつお伝えします。
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