15kg未満の子どもにもエピペンを使えるの?最新の考え方と安全な使い方
最近、あるテレビドラマで3歳の子どもがアナフィラキシーで命を落とすという、胸が痛むシーンがありました。このドラマをきっかけに、インターネット上では「なぜエピペンを使わなかったの?」という声が多く見られました。
そして「体重が15kg未満の子どもにはエピペンが使えないということを初めて知った」という話も広がりました。
…アナフィラキシーって聞いたことありますか?
特定の食べ物や薬、ハチに刺されたりした後に、体に急に現れる重いアレルギー反応のことです。皮膚がかゆくなったり、息が苦しくなったり、お腹が痛くなったり、さらにはぐったりして意識がなくなることもある危険な状態です[1]。
こういう症状は、原因物質に触れてからわずか数分から数十分という短い時間で急速に悪化していきます。
このような緊急事態に備えて作られたのが「エピペン®」です。
エピペンは、アナフィラキシーの治療に必須のアドレナリン(エピネフリンとも呼ばれます)という薬を、太ももの筋肉に自動で注射できる医療機器です[1]。
アドレナリンは、アナフィラキシーで起こる危険な体の変化(血圧が下がる、気道が腫れて狭くなるなど)を元に戻す力を持つ薬です。注射すると、血管を縮めて血圧を上げ、呼吸を楽にし、アレルギー物質の放出を抑える効果があります[1]。
普通の飲み薬(抗ヒスタミン薬やステロイドなど)では、アナフィラキシーの症状を根本的に改善する効果は弱く、アドレナリンの代わりにはなりません。
体重と薬の量の関係について

筆者がClaudeを利用して作画
薬の量は、体の大きさ(体重)に合わせて調整するのが基本です。これは、体が大きいほど薬が広がる体液の量が多くなるからです[2]。
アナフィラキシー治療に使うアドレナリンの推奨量は、世界的に「体重1kgあたり0.01mg」とされています[3]。
この計算だと、
体重10kgの子ども → 0.1mg
体重15kgの子ども → 0.15mg
体重30kgの子ども → 0.3mg
になりますね。
では、日本で使えるエピペンはどのような規格があるでしょう。
2種類あります。
エピペン®0.15mg:体重15〜30kg未満の子ども用
エピペン®0.3mg:体重30kg以上の子どもや大人用
すなわち、体重15kg未満の子どもに0.15mgを使うと「過量」になる計算です。
例えば、
体重10kgの子どもに0.15mgを使うと → 推奨量の1.5倍
体重7.5kgの子どもに0.15mgを使うと → 推奨量の2倍
この、推奨量とずれる場合にどのようい考えればよいでしょうか?
『ほむほむ先生の医学通信』ー あなたの子育てに、最先端の医学知識を。25年以上の臨床経験を持つ小児科医が贈る、子ども健康情報源。小児科学会やアレルギー学会の委員も務める筆者が、2000本以上の医療記事で培った説明力で、医学知識をわかりやすく解説します。毎月お届けする4〜8本のweb記事以上の詳細な記事により、最新の研究結果や日々の診療から得た知見を、あなたの元へ直接お届けします。サポートメンバーに登録すれば、全ての記事と過去のアーカイブに全てアクセス可能です。無料記事も定期的に配信しますので、ぜひご登録ください。※ この記事の続きは会員限定です。登録後すぐに全文をお読みいただけます。
この記事は無料で続きを読めます
- 15kg未満の子どもへのエピペン使用:日本と世界の考え方の違い
- 体重15kg未満の子どもとエピペンの針の長さの問題
- エピペンの薬価と日本の状況
- よくある質問(Q&A)
- 最新の研究と未来の展望
- まとめ
- 参考文献
すでに登録された方はこちら
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績

