「窓の鍵、かけましたか?」インフル異常行動の正体と、2025年最新エビデンスでわかった「タミフルへの誤解」とは?

「窓の鍵、かけましたか?」 インフルエンザによる異常行動と転落事故。「タミフルの副作用が怖い」というイメージがありますが、2025年の最新知見では、薬の有無に関わらずウイルス自体が脳に影響を与えることが分かってきました。本記事では、異常行動の正体から、危険な「脳症」との見分け方、そして親御さんが最優先ですべき「物理的な転落防止策」まで、最新エビデンスに基づき徹底解説します。
堀向健太 2025.11.30
読者限定

こんにちは、小児科医のほむほむです。

まずは、新しく登録してくださった皆さんへ、心からの御礼を言わせてください。先日のXでの「インフルエンザの時のお風呂」の投稿をきっかけに、なんと1500名以上の方がこのニュースレターの購読をスタートしてくださいました。

ようこそ、エビデンスに基づく「医学を一緒にを学ぶ場」へ。

これで私たちの仲間は1万5000人に達し、医療系ニュースレターとして3番目の規模となりました。前回は「お風呂」という、お子さんが少しでも《快適に過ごすためのホームケア》についてお話ししました。

しかし今回は、さらに一歩踏み込んで、《お子さんの命に直結する、重要な安全の話》をいたします。 ニュースで報じられた、インフルエンザにかかったお子さんの、痛ましい「マンションからの転落事故」。これを見て、「タミフルなどの薬が原因だから、薬を使わなければ安心」と思っていませんか?

実は、2025年の最新知見では、その常識は大きく覆りつつあります。「薬を飲ませない」だけでは、悲しい事故は防げません。では、私たち保護者は具体的にどうすればいいのでしょうか? 新しく参加してくださった皆さんと一緒に、お子さんを守るための「親の行動原則」をアップデートしていきましょう。

***

研修医A先生「先日、外来でインフルエンザと診断した小学1年生のお母さんから、『先生に言われた通り、窓の鍵を全部かけたんです』って感謝されたんです。ニュースで高熱の子がベランダから転落した事故を知って、すごく心配になられていたみたいで...。 厚労省のリーフレットや、巷で話題の『インフル3大マジでやっとけ』という投稿もあり、事故予防の意識が高まっていますよね。でも、『そもそも、なんでインフルエンザで子どもはあんな行動をするんですか?』という根本的な疑問に、自信を持って答えられなくて。タミフルが原因じゃないのは分かっているつもりなんですが、保護者の方の不安が大きくて、うまく伝えられないんです...。特に『いつまで気をつけたらいいのか』や『薬を飲んでも飲まなくても危険』という点をどう説明したら腑に落ちてもらえるか...。」

ほむほむ先生「ああ、A先生、お疲れ様。まさに今、僕らが力を入れて説明しなきゃいけないテーマだね。ニュースでも報じられていた杉並区での転落事故の件は、本当に胸が痛む出来事だったね…。いま、保護者の方々がどれだけ心配しているか、現場にいる僕らにはよく分かるよ。A先生の言う通り、『窓の鍵をすべてかける』といった具体的な予防策が広がるのは、事故を防ぐうえで本当に重要だ。 でもね、その『なぜ』という医学的背景、そして最新のエビデンスを踏まえた『適切な警戒期間』を、保護者の方の不安に寄り添いながら伝えることが、僕たち小児科医の大切な仕事なんだよ。一緒に考えてみよう。」

本記事を最後まで読めば、

 ・インフルエンザの異常行動の原因と、安全確保が特に重要な期間は?
 ・「薬のせい」という誤解に対する最新の科学的根拠は?
 ・命を守るために保護者がすべき具体的な行動原則は?

これらのの疑問が解決するように執筆しました。

異常行動の正体:薬のせいではなく、インフルエンザが脳を揺さぶる

nano-bananaで作画

nano-bananaで作画

ほむほむ先生「この『異常行動』の正体を理解することは、保護者さんの不安を取り除く第一歩なんだ。まず結論から言うと、異常行動の正体は薬の副作用ではなく、インフルエンザウイルスによる『脳への影響』なんだ。これには軽いものから重いものまで連続した段階(グラデーション)があると考えてほしい [1, 2]。」

A先生「グラデーション...ですか。『脳症』というと、意識障害やけいれんを伴う、生命に関わる重篤な合併症ですよね。一方、『熱せん妄』は高熱時に一時的にうわ言を言ったり、変な行動をしたりする、比較的良性のものという理解なのですが...。」

ほむほむ先生「その通り。多くの保護者の方が目撃する『急に走り出す』『意味不明なことを言う』といった行動のほとんどは、『熱せん妄(ねつせんもう)』と呼ばれる、高熱による一時的な脳の混乱なんだ。これは言わば『起きているけれど夢を見ている』ような状態で、多くは自然に治まる。でも、その延長線上に、ごく稀にだけど命に関わる『インフルエンザ脳症』という重篤な状態が隠れていることがある [2, 3]。」

 A先生「なるほど…!つまり、異常行動という現象だけ見ると、良性の熱せん妄から重篤な脳症の初期症状まで幅がある、という理解なんですね。日本の調査では、『飛び降りなどの生命に関わる危険な異常行動』は、同じインフルエンザでもごく一部で、頻度としては日常診療でよく見る“中等度の異常行動(うわ言や徘徊など)”より桁違いに少ないことも報告されていますよね [4]。」

ほむほむ先生「その理解で合っているよ。だからこそ、僕たちは保護者の方に、『短時間の一過性の異常行動はよくあることだけど、持続的な意識障害やけいれんは危険なサインだ』 というメッセージを、しっかり伝える必要があるんだ。日本からの研究では、異常行動を示した子どもたちを詳細に調べた結果、『異常行動の持続時間の長さ』『意識レベル低下』『けいれんの有無』が、良性の熱せん妄と重篤な脳症を見分ける重要なポイントだと示されている [2, 3]。」

メモ:ここで言う「長く続く」は、厳密な固定時間ではありませんが、目安として 1時間以上、意味不明な行動や反応の悪さが断続的に続く場合を危険サインとして考えておくと、保護者にも伝わりやすいと考えています(実際の診療指針では「持続する意識障害」「悪化していく意識レベル」が重視されています)。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、12604文字あります。
  • 「タミフル=異常行動」は、もはや過去の誤解に近い
  • 特に注意すべきリスク層と脳症の「危険なサイン」
  • 思春期・男性に多い「異常行動」の特異性
  • 子どもの命を守る!インフルエンザ罹患時の行動原則
  • まとめ
  • 参考文献

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