2026年、粉ミルク世界リコールから学ぶ──赤ちゃんの「食の安全」を守るための教訓とは
こんにちは、ほむほむです。今月2本目の記事をお届けします。
2026年が明けて早々、世界を揺るがすニュースが飛び込んできました。ネスレやダノンといった誰もが知る大手メーカーが、60カ国以上で乳児用粉ミルクを一斉リコール。外来でも「うちのミルクは大丈夫ですか?」という質問が増えています。
今回は、この危機の原因である毒素「セレウリド」の正体から、日本の粉ミルクが安全と言える根拠、そして個人輸入に潜む意外な落とし穴まで、A先生との対話形式で深掘りしていきます。
前半部分(セレウリドの基礎知識と世界的リコールの概要)は無料でお読みいただけます。後半の歴史的教訓、日本の現状分析、具体的な自衛策については有料部分でお届けします。
2026年の幕開けとともに飛び込んできた、乳児用粉ミルクの世界同時リコールという衝撃的なニュース。ネスレやダノンといった世界的な食品企業が、60カ国以上で一斉に製品を回収する異例の事態に、不安を感じている親御さんも多いのではないでしょうか。
この問題は今も動き続けています。
シンガポール食品庁が、ネスレやダノン傘下デュメックスの製品にリコールを命じたほか、ベルギーではこれら製品を摂取した乳児1名がセレウリドによる嘔吐・下痢を発症し回復したことが当局により確認されています[1]。
この危機の正体である毒素「セレウリド」や、複雑化した現代の供給網(サプライチェーン)に潜むリスク、そして日本の消費者が知っておくべき自衛の知識を深掘りしていきます。
歴史的な教訓を振り返りながら、赤ちゃんの「食の安全」をどう確保していくべきか、現場の視点から一緒に考えていきましょう。
本記事を最後まで読めば、以下の疑問にお答えできるよう執筆しました。
・世界を揺るがした毒素セレウリドの正体と、なぜ加熱でも防げないのか。
・グローバル供給網の盲点と、一社依存が招く連鎖リスクの構造。
・日本国内で安全にミルクを選び、個人輸入の落とし穴を避ける方法について。
ご注意:本記事は2026年2月時点の公開情報に基づく一般的な解説であり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。お子さまの体調に不安がある場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。
世界60カ国以上を襲った「粉ミルク同時リコール」の衝撃
A先生「先生、ちょっと見てもらえますか? 2026年が明けて早々、ネスレやダノンといった世界的な食品企業が、乳児用粉ミルクの一斉リコールを60カ国以上で発表しています。さっき外来でも、お母さんから『うちのミルクは大丈夫ですか?』って聞かれて、正直、答えに詰まってしまって……」
ほむほむ先生「……それは不安になるよね。画面を見せてもらっていいかな?」
ほむほむ先生はA先生のモニターに目を通しながら、ゆっくりと椅子を引き寄せた。
ほむほむ先生「うん、やっぱりそうだ。今回の危機は単なる一つの製造ミスではなく、複数の問題が同時に噴出した『複合災害』と呼ぶべき側面があるね。グローバル化したサプライチェーンの脆さ、目に見えない毒素の脅威、そして過去の教訓がどこまで生かされてきたのか……。こうした視点で紐解くと、問題の本質が浮かび上がってくると思う」
A先生「複合災害、ですか。実は今朝、もう一つ気になるニュースを見つけたんです。シンガポールの食品庁と感染症管理庁が共同声明を出して、ネスレの製品1ロットと、ダノン傘下デュメックスの製品1ロットにリコールを命じたって[12]。」
ほむほむ先生「シンガポールの事例、重要だね。確か、その製品を摂取した乳児1人が軽度の症状を示したという報告もあったらしいね。幸い回復したそうだけど、臨床検査ではセレウリド中毒と断定するところまでは至っていないらしい[12]。ただ、販売停止・回収対象の粉ミルクは輸入量全体の5%未満とのことで、当局は冷静な対応を呼びかけている」
A先生「5%未満でも、自分の子どもがその5%に当たっていたらと思うと、親御さんの不安は計り知れませんよね……。でも、まずは一番の懸念材料になっているセレウリド毒素の汚染事件から教えてください。複数のライバル企業が一度に被害に遭うなんて、一体何が起きたんでしょうか」
ほむほむ先生「影響を受けた製品リストを見ると、ネスレの主力ブランドだけでなく、ダノン傘下の製品、さらには重度のアレルギーを持つ赤ちゃんのための特殊ミルク(アミノ酸調製粉末)まで含まれているんだ[1]。アレルギー用のミルクしか飲めない子にとって、代替品が簡単に見つからない状況は文字通り命に関わる。事態は深刻だね」
A先生「代替品がないって……。アレルギーの子のご家庭は本当に追い詰められますね。ところで先生、さっき『完成品の検査だけでは見えないものがある』っておっしゃりかけましたよね。あの言葉が少し引っかかっているんですが」
ほむほむ先生は少し間を置いて、小さくうなずいた。
ほむほむ先生「ああ、その話はこの後の流れで伝えるよ。まずは、原因物質のセレウリドがどれほど厄介な存在なのか、そこから見ていこうか」
熱にも強い毒素「セレウリド」──なぜ調乳では防げないのか
A先生「セレウス菌の毒素、セレウリド。名前は聞いたことがありますが、実際にどれくらい危険なものなんですか?」
ほむほむ先生「セレウリドの何が一番厄介かというと、その驚異的な耐熱性なんだ。食品安全委員会のファクトシートにも記載があるけれど、126℃で90分加熱しても完全には失活しないとされている[3]。これは病院で使うオートクレーブ、すなわち、高圧蒸気滅菌器をはるかに超える条件だよ」
A先生「126℃で90分……。ということは、家庭でミルクを作るときの70℃以上のお湯では、まったく歯が立たないってことですか」
ほむほむ先生「その通り。ここが臨床的にも衛生指導的にもポイントになる部分で、よく押さえておいてほしいんだ。セレウス菌の菌体そのものは加熱で死滅させることができる。でも、菌がすでに食品中に産生してしまったセレウリドは、そのまま残り続ける。つまり、汚染された原材料が製品に入り込んだ時点で、後からどれだけ加熱しても毒素を取り除けないんだよ[2][3]。」
A先生「菌は殺せても毒は消えない……。完成した製品を検査して菌が見つからなかったとしても、毒素はすでに残っている可能性があるということですよね。先生がさっき言いかけた『完成品の検査だけでは見えないもの』って、もしかしてこのことですか?」
ほむほむ先生「鋭い質問だね。……でも、まだ半分なんだ。その先の話は、もう少し後で」
ほむほむ先生はそう言って、少し意味ありげな表情を浮かべた。
ほむほむ先生「まず臨床像を整理しておこうか。セレウリドを摂取すると、早ければ30分から6時間という短時間で激しい嘔吐が起きる[3]。嘔吐型の食中毒像で、腹痛や下痢を伴うこともあるんだ。症状は通常24時間以内に治まることが多いけれど、乳幼児や免疫不全の方では合併症のリスクが高くなるんだ。」
A先生「乳児の場合、嘔吐が続くとあっという間に脱水が進みますよね。体重あたりの体水分量が多い分、失うスピードも速い」
ほむほむ先生「そう、そこが怖いところなんだよ。実務的な対応を整理しておくと、まず製品名・ロット番号・賞味期限を確認して、各国の公的回収情報やメーカー告知と照合する。該当すれば使用中止を案内する。そして、もしすでに飲んでいて反復する嘔吐、哺乳不良、尿量の低下、ぐったりしている様子があれば、脱水を念頭に当日中の受診を勧めるのが基本だね。」
A先生「なるほど! 受診の判断基準を具体的に知っておくだけでも、外来で親御さんにお伝えする際の言葉に説得力が出ますね」
ほむほむ先生「さらに重症化した場合には、セレウリドが細胞の中にあるミトコンドリア──いわばエネルギーを作る工場を直接攻撃して、肝不全を引き起こすリスクがあることも知っておいてほしい[3]。乳児にとって、肝臓へのダメージは致命的になりかねないからね」
A先生「ミトコンドリアへの直接攻撃……。ということは、単なる食中毒の域を超えて、臓器障害にまで至り得るわけですか。本当に性質の悪い毒素ですね……」
ここから先は有料部分です。この先では、以下の内容をお届けします。
🔍 汚染の構造 ── なぜライバル同士が同時に被害に遭ったのか。中国・カビョウ社への一社依存が生んだドミノ倒しの全貌
🏭 もう一つの危機 ── 米国バイハート社の工場で発見された衝撃的な実態と、乳児ボツリヌス症の集団発生
⚠️ 見えない脅威 ── 粉ミルクの約半数から検出された重金属汚染の実態
📖 歴史の教訓 ── 森永ヒ素ミルク事件の被害者追跡データが示す、乳児期曝露の超長期的影響
🇯🇵 日本の親御さんへ ── 国内製品の安全性の根拠と、個人輸入の「届かないリコール通知」という盲点
🔑 結論 ── 「完成品の検査だけでは見えないもの」の正体
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