母乳だけではビタミンKが不足する驚きの理由とは?進化の秘密から解読する
今年2本目の記事を配信します。本当は1本目の予定でしたが、急遽1本目の作成をしました。
今年も、読みやすく、詳しく、周りと共有したくなるような、そして「根拠を明示した」記事をお届けしてまいります。
2026年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
小児科の医局。研修医のA先生はある症例報告を前に首をかしげていました。それは、母乳だけで元気に育っていた赤ちゃんが、ある日突然脳出血を起こしたという記録です。「完全食」のはずの母乳に、なぜリスクが隠れているのでしょうか。
そんなA先生の疑問に、最新の科学という視点でこの謎を解き明かしていきましょう。
本記事を最後まで読めば、
・母乳栄養でビタミンKが不足する驚きの理由とは?
・赤ちゃんの命を救う「SOSサイン」の見分け方
・なぜ進化はビタミンK不足というリスクを残したのか?
これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。
母乳栄養児に潜む「沈黙の病」:晩発型ビタミンK欠乏性出血症とは
nano-bananaで作画
ほむほむ先生「A先生、お疲れ様。熱心に読んでいるね」
A先生「あ、ほむほむ先生。実は今、この症例報告を読んでいて胸が痛くなっていたところなんです。順調に母乳で育っていた赤ちゃんが、突然脳出血を起こすなんて……」
ほむほむ先生「母乳は栄養バランスが素晴らしい『完全食』と言われるよね。でも、その母乳で健康に育っている赤ちゃんが、何の前触れもなく命に関わる脳出血を起こすことがあるんだ。これが『乳児ビタミンK欠乏性出血症(VKDB)』と呼ばれるものだよ。特に生後2週間から6か月の間に起こるものを『晩発型』と呼んでいるんだ[1]」
A先生「晩発型……つまり、生まれてすぐではなく、しばらく経ってから突然やってくるということですね。それがまた恐ろしいです」
ほむほむ先生「その通り。日本での2020年のレビューでは、乳児ビタミンK欠乏性出血症は発症時期によって3つに分類されているんだ。生後24時間以内の早発型、生後1週間以内の古典型、そして生後2週から6か月の晩発型だね。特に晩発型は母乳栄養や胆汁うっ滞がリスクになって、頭蓋内出血が中心で重篤になりやすいと強調されているよ[1]」
nano-bananaで作画
A先生「この数字、改めて見ると本当に恐ろしいです。晩発型乳児ビタミンK欠乏性出血症を発症した赤ちゃんの多くに脳内出血が起きて、亡くなってしまう子もいるなんて……。見過ごしてはいけない重みを感じます」
ほむほむ先生「じゃあ、具体的な数字を見てみようか。Shearerらが2017年にまとめた研究では、晩発型乳児ビタミンK欠乏性出血症では頭蓋内出血の頻度は60〜80%、死亡率は14〜24%、そして生存しても約半数に永続的な神経学的後遺症が残りうるとしている[2]。また、先程挙げた荒木・白幡のレビューでは、特発性の晩発型では頭蓋内出血が82.7%にも達し、致死率は20〜50%になり得ると明記されているんだ[1]」
A先生「82.7%……。ほとんどの子が脳に出血を起こすということですか…。それでいて、発症の直前まで赤ちゃんは元気に見えているなんて、親御さんにとってどれほど衝撃的なことか……」
ほむほむ先生「そうなんだ。一番怖いのは、発症の直前まで赤ちゃんは体重も増えていて、ニコニコ笑っていることも多いということ。でもある日突然、嘔吐や痙攣が始まる。オーストラリアでおこなわれた1993年から2017年までの長期調査で報告されたデータでも、死亡例はすべて頭蓋内出血だったことが確認されているんだ[3]」
A先生「国家規模の調査でも、やはり頭蓋内出血が致命的な転帰の中心なんですね……。でも、予防さえしていれば防げるんですよね?」
ほむほむ先生「その通り。でもね、A先生。ここで一つ、後で詳しく話すことを心に留めておいてほしい。予防投与をしていても、ある特定の状態の赤ちゃんでは、シロップを飲んでいるのに効きにくくなることがあるんだ。その『見えない落とし穴』については、後ほど詳しく説明するよ」
A先生「見えない落とし穴……。それは一体どういうことでしょうか?」
ほむほむ先生「まあ、焦らないで。まずはビタミンKがなぜ母乳に少ないのか、その根本的な理由から紐解いていこう。そこには、ある『強烈なパラドックス』が隠されているんだ」
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- なぜ母乳にはビタミンKが少ないのか?人体に備わる「乳腺関門」の壁
- 赤ちゃんの腸内細菌叢は、ビタミンKを作りにくいのはなぜ?
- 進化の天秤:出産時の血栓と感染症のリスクを回避する戦略
- 脳の発達を最優先する資源配分:ビタミンKが脳へ運ばれる理由
- 命を救うSOS:警告出血と「便の色」で見分ける胆道閉鎖症
- 進化のミスマッチを埋める現代医療:K2シロップというセーフティネット
- まとめ
- 参考文献
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