「インフルB型はA型より軽い」は危険な誤解?

インフルエンザB型が急増しています。「B型は熱が出にくい」「軽いから大丈夫」と思っていませんか?実はその常識、最新の研究では「子どもの場合、逆かもしれない」ことがわかってきました。油断禁物なB型の真実を、最新データと共に解説します。
堀向健太 2026.02.05
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今月1本目の記事をお届けします。

2026年2月、インフルエンザが再び勢いを増しています

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/

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今回の主役は、年末まで優勢だったA型ではなくB型

学級閉鎖は増加し、子どもたちの間でB型感染が急速に広がっているのです。

本記事を最後まで読めば、

・ 症状だけでA型とB型を見分けることがなぜ困難なのか?
・「B型は軽症」という定説を覆すデータの実態とは?
・ 回復期の足の痛み「筋炎」の正体と家庭での見守り方?

これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。

※最後に、「文字のぼかしのない」イラストを示します。

***

B型インフルが流行している、そんなニュースが広がってきた翌朝。

A先生「先生、ちょっとお時間いいですか?」

午前の外来を終えたばかりのほむほむ先生のデスクに、研修医のA先生が、少し青い顔をしてやってきました。その表情には、昨日からずっと抱えていたものが滲んでいました。

A先生「昨日の午後の外来でのことなんですが……。B型陽性が出たお子さんのお母さんに、『今回はB型だから、去年のA型よりは安心ですよね?』って聞かれたんです。正直、はっきり否定できなくて、つい頷いてしまって。でも帰り道にずっとモヤモヤしていて、本当にそう言ってよかったのかなって……」

ほむほむ先生はパソコンの資料をそっと閉じ、A先生に椅子を勧めました。

ほむほむ先生「……その話、実はとても大事な問題に繋がっているんだよ」

A先生「やっぱりまずかったですか……」

ほむほむ先生「今、ちょうどB型が急増しているタイミングだからね。ニュースでも報じられていたけれど、例年ならB型は春先にかけてゆるやかに流行するものなのに、今季はA型の流行が完全に収束しないうちに増加しているんだ。A型にかかった人でもB型に改めて感染する可能性があるからね」

A先生「……実はもう一つ、気になっていることがあって」

少し言いにくそうに、A先生は続けました。

A先生「先週、B型から回復したお子さんのお母さんから電話があったんです。『熱は下がったのに、急に足が痛いって泣いて、歩けなくなった』って。その時は筋肉痛の名残かなと思ってそうお伝えしたんですが……お母さんの声がすごく不安そうで。あれで本当によかったのか、今でも引っかかっています」

ほむほむ先生の表情が、わずかに変わりました。

ほむほむ先生「…その話は、後でじっくり取り上げよう。実は、それはとても重要なサインかもしれないんだ」

A先生「重要なサイン……?」

ほむほむ先生「ああ。今日はちょうどいい機会だね。インフルエンザのA型とB型について、世間で信じられている『常識』を一つずつ検証してみようか。さっきの足の痛みの話にもちゃんとたどり着くし、途中で『治療のギャップ』という、ちょっと気になる話題にも触れることになるはずだよ」

A先生「治療のギャップ……ですか」

ほむほむ先生「でもまずは基本から。焦らず順番に整理していこうか」

***

症状だけでA型とB型を見分けるのは専門医でも困難

A先生「まず基本的なところからお聞きしたいのですが、診察室で患者さんを診ただけで、『これはA型だな』『B型だろう』と見分けることは可能なんでしょうか

ほむほむ先生「率直に言えば、それは神業に近いね。どちらも同じインフルエンザウイルスが引き起こす病気だからね。突然の38度を超える発熱、のどの痛み、咳、全身を襲うような倦怠感(けんたいかん=だるさ)。この基本セットは、A型もB型も驚くほどそっくりなんだよ」

A先生「ですよね。以前読んだフランスのプライマリ・ケアで行われた研究でも、同じ結論が出ていました。確か、10シーズンにわたって14,000人以上の確定例を集めた大規模なものだったと思います」

ほむほむ先生「Mosnierらの研究だね [1]。2003年から2013年にかけて、定点観測を担う医師たちが集めた全世代の患者データなんだ。B型は5歳から14歳に多いという年齢分布の偏りは見られたものの、個々の症状の頻度差はほとんどが10%未満にとどまっていた。つまりは、外来診察で型を見分けるのは『実質困難』だとされているんだよ」

A先生「プロの医師が10年分のデータを集めても区別がつかないのに、なぜ世間では『A型はこう、B型はこう』という話がこれほど浸透しているんでしょう?」

ほむほむ先生「いい疑問だね。それは何万人という大きな集団を統計的に解析して初めて浮かび上がるような、小さな『傾向の差』が一人歩きしてしまった結果だと思うよ。個人レベルでは誤差の範囲に収まるような数字でも、母数が大きくなると確かに興味深い偏りは見えてくる。でもそれを、目の前の患者さん一人に当てはめようとした瞬間…」

A先生「途端に役に立たなくなる、と」

ほむほむ先生「その通り。だからこそ型の判定には検査が必要になるんだけど、その統計上の『傾向』を知っておくこと自体には意味があるんだ。次は、その中でも特に誤解が多い『熱の出方』を見てみようか」

***

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続きは、14836文字あります。
  • 年齢によって「熱の出方」が逆転する驚きの事実
  • 「B型はお腹に来る」は本当か? データから見る消化器症状
  • 回復期に突然歩けなくなる? B型に多い「良性急性小児筋炎」の正体
  • 「B型は軽い」という思い込みが命を脅かすことがある
  • 迅速検査の限界。「陰性=安心」ではない
  • 「山形系統」の消失。インフルエンザの歴史的転換点
  • まとめ
  • 参考文献

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