【大人の手足口病】子どもから親にも感染する?その感染リスクと対策は?
現在、近年稀にみるほど、手足口病の流行が大きくなってきています[1]。
東京都の流行を示すマップも真っ赤です。
手足口病は、『エンテロウイルス属』というウイルスの仲間で引き起こされる感染症です。
エンテロウイルスには様々なウイルスが含まれます。そして手足口病は、コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71、コクサッキーウイルスA6などが原因となり、感染力の高いウイルス感染症なのです。
そして最近、外来で尋ねられることが増えているご質問があります。
『私も子どもから手足口病に罹る可能性がありますか?』というものです。
そして『すでに私も罹っています』と、手足口病らしい皮疹のある手足を示してくださる親御さんもいらっしゃいます。
『大人も手足口病に掛かる可能性がある』とは書いてあるネット記事も見かけますが、具体的な出典に基づいた内容に言及しているものは少ないようです。
そもそも、大人で手足口病に罹る可能性はどれくらいなのでしょうか?
重症化する可能性はあるのでしょうか?
そこで今回は、大人の手足口病に関し出典に基づき解説できれば良いなと考えて記事を書きました。
このニュースレターでは、さまざまな子どもやアレルギーに関する医療情報を豊富な出典に基づき配信しています。継続的に記事を受け取りたい方は、 メールアドレスを登録していただくことで 次回以降 メールで記事を お届けすることができます。よろしければご登録をよろしくお願いいたします。
そもそも、大人も手足口病に罹るのか?
イラストAC
手足口病は、主に5歳以下の子供がかかりやすい病気です。
中国での調査では、2~3歳の子供の発症率が最も高く、2歳で2.4%、3歳で2.95%でした。そして4~6歳の子供の発症率は、4歳で1.15%、5歳で0.72%、6歳で0.39%と、年齢が上がるにつれて低くなりました[2]。
すなわち、幼児や未就学児が最も多く、大人は少なくなるということです。
しかし、手足口病は、子どもや免疫不全のあるひとだけでなく、条件によっては健康な成人にも感染する可能性があることもある病気であることも確かです[3]。
では、大人が手足口病にかかる確率はどのくらいなのでしょう。
シンガポールで1981年に発生したコクサッキーウイルスA16による手足口病の流行に対し研究が行われています。
やはり5歳未満の子供に多く、1~4歳の子供が全体の64.4%を占めており、15歳から44歳の方は、全体の3.7%でした[4]。
文献4より、筆者が翻訳
そして中国の広州市と韶関市で行われた研究では、手足口病にかかった子どもの養育者である大人の14.1%がウイルス検査で陽性であったと報告されています。
しかし、ウイルスの存在が証明されても、発症するとは限りませんね。
ある研究の中で、大人の約11%がウイルスに触れた後に感染するものの、そのうち症状が出るのは1%未満であると言及されていました[6]。
しかし、この数字の根拠となる文献にあたってみようとすると、どうもその数字が読み取れません。どうも『一般的に言われている数字』で、十分な根拠に乏しいのかもしれません。
そもそも、外来で『私も罹ってしまいました』という親御さんのお話からは、そこまで感染率が低いイメージではないのです。
では、もうすこし深堀りしして見てみましょう。
すると、家族の中で子どもが手足口病にかかった場合、同居している大人が手足口病に罹る確率はもっと高い印象が読み取れます。
この記事は無料で続きを読めます
- 手足口病は子どもから大人まで家族内感染のリスクが高く、特に子どものいる家庭では注意が必要。
- 大人の手足口病の多くは軽症ですが、他の病気との区別が難しい場合もあり、広範囲に多彩な症状が出ることがある
- 大人の手足口病は通常1〜2週間で回復するものの、稀に重篤な合併症を引き起こし、その場合は回復に時間を要する可能性がある。
- 手足口病は対症療法中心で自然治癒しますが、症状に応じた薬剤と自宅療養が重要です。
- 手足口病は感染力が強く、家庭内での寝具、タオル、哺乳瓶などの共有が主な感染拡大要因となる
- 手足口病を家族内で広げないために。
- 参考文献
すでに登録された方はこちら