食物アレルギーがあると、皮膚に食べ物が触れただけで強いアレルギー症状を起こしますか?

食物アレルギーがある人の皮膚に、食べ物が触れただけで重篤な症状が起こるのかを、最新の研究結果と症例報告から深堀りします。
堀向健太 2024.10.13
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最近、食物が皮膚に接触しただけでアナフィラキシーを起こしたというニュースが話題となりました。

しかし、その後、実際に皮膚に食べ物を付着させても全身的な症状は確認されず、誤食が原因ではないかとの指摘もあります。

それでも、食物アレルギーを持つ方々にとっては、「食物が皮膚に触れるだけで重篤な症状が発生するのではないか」といった不安を感じることもあるでしょう

Grokで作画

Grokで作画

今回は、食物が皮膚に触れただけで症状が起こりうるのかというテーマを深堀りしてみましょう。

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皮膚からのアレルゲン吸収は可能か?

Grokで作画

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まず、食物アレルゲンが皮膚からどの程度吸収されるのか、あるいはそもそも吸収されるのかという疑問が生じます。

皮膚の一番外側には、『角層』というとても強い組織がからだを守っています。そして、よほどの細かい粒子でない限り、角層を突破できない仕組みになっています。

この粒子のことを分子といい、この分子の重さのことを『分子量』といいます。

ちょっと深堀りしましょう。

アレルギーを起こす物質は、主にタンパク質です。
タンパク質は、アミノ酸がたくさんつながって形作られています。たとえば、アミノ酸の分子量は100ダルトン前後です(ダルトンは、分子量の単位)。

そして、たとえば、牛乳アレルギーを起こしやすいタンパク質(αs1カゼイン)の分子量は23000ダルトンです。すなわち、イメージとしては数百個のアミノ酸がレゴのようにくっついてタンパク質を作っているわけです。

『500ダルトンルール』という、2000年にBos JDとMeinardi MMHWによって提唱された法則があります。

『500ダルトンルール』は、「分子量が約500ダルトン以下の物質は、皮膚を透過して体内に吸収される可能性がある」というものです。皮膚の透過性に関する経験則で、皮膚科学や薬剤学の分野で広く知られています。


皮膚のバリア機能が正常な状態であれば、食物アレルゲンのような大きな分子は簡単には皮膚を通過できないと考えられます。

皮膚バリアが損なわれた場合のリスク

では、皮膚の構造が傷んでいる場合はどうでしょう?

例えば、アトピー性皮膚炎を持つ人は皮膚のバリア機能が低下しているため、食べ物に含まれるアレルゲンが皮膚を通過しやすくなり、アレルギー症状が出やすくなる可能性があります。

では、皮膚の状態によってどれくらいタンパク質の通過量が変わるのでしょうか?

ゴム手袋の材料であるラテックスを用いた実験があります。

ラテックスを24時間皮膚に付着させた場合、健康な皮膚では1%未満しか吸収されず、大きなタンパク質であるヒト血清アルブミンはほとんど通過しませんでした。しかし、傷ついた皮膚にラテックスを塗布したところ、タンパク質の最大23%が吸収されました[2]。この結果から、健康な皮膚は外部からの物質をしっかり防ぐ役割があることが分かります。

皮膚に触れただけで全身反応は起きるのか?

Grokで作画

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実際に、アトピー性皮膚炎と牛乳アレルギーを持つ子どもに対して、牛乳が皮膚に触れた場合の反応を調べた研究があります。51人の子ども(平均年齢1歳10ヶ月)の健康な皮膚に牛乳を一滴たらして30分間反応を観察したところ、51人中35人が数分以内にじんましんのような反応を示しました[3]。

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