温暖化が進み永久凍土が解けると新種ウイルスが蔓延するのか?現時点でいえることを医師が解説
先日、「疾病X」に関する記事をみていただいたニュースレターの担当者の方から、「先生、永久凍土が溶けて昔のウイルスが出てきて、人間に感染するかもしれないって聞いたんですけど、本当なんでしょうか?」というご質問をいただきました。
なるほど、最近は地球温暖化や環境問題がニュースで取り上げられることが多く、そんな不安を持つ人も少なくないかもしれません。[1][2]
永久凍土って何でしょうか?
PhotoAC
まず、「永久凍土」についておさらいしましょう。
永久凍土とは、2年以上連続して土壌が凍ったままの状態を指し、北極圏やシベリアなどの極寒地域に広がります[3]。
この極寒の大地は、昔から数万年単位で微生物やウイルスを閉じ込めてきた「天然の冷凍庫」ともいえる存在です。[4]
ところが近年、地球温暖化による気温上昇が原因で、永久凍土が少しずつ溶け始めています。これによって、昔の世界に存在していた微生物やウイルスが、現代の環境へと解き放たれる可能性があると考えられています。[5][6]
古代ウイルスの「復活」とは?
DALL-E3で作画
実際、シベリアの永久凍土から数万年前の巨大ウイルスが発見され、実験室で培養に成功したという報告があります。たとえば、「ピソウイルス」や「モリウイルス」といった(ウイルスとしては)非常に大きなウイルスが、アメーバに感染することが確認されました。
この発見は、「永久凍土に閉じ込められた古代ウイルスが、現代でも活動できる可能性」を示しています。[7]
こうした古代ウイルスは、メディアで「ゾンビウイルス」と呼ばれることもありますが、現時点で「人間に直接、すぐに感染する」という確たる証拠はありません[8]。
ただし、未知の存在があることは間違いなく、地球温暖化による環境変化と相まって、どのような影響が出るかはまだ明らかになっていません。