学校給食で起こった『集団びわアレルギー』。126人のすべてがアレルギーだったのか?

2024年6月25日に学校給食でびわが提供され、児童生徒126人がアレルギー反応を示したというニュースがありました。そこで、アレルギー専門医の視点から、びわアレルギーが起こる原因と、全員が本当にびわアレルギーだったのかということについて深堀りして考察してみました。
堀向健太 2024.07.11
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2024年6月25日に学校給食でびわが提供され、児童生徒126人がアレルギー反応を示したというニュースがありました[1]。

びわアレルギーに関しては、2019年にも同じようなニュースがありました[2]。

またびわなのかなと思いながら、そのニュースを見ていました。

今回症状があった方々の快癒を願っております。

そのうえで、びわでアレルギーが起こる原因を考えると、今回症状が出た人が全員が本当にびわアレルギーだったのかということについて疑問もでてきました。

それを今回はお話させていただきたいと思います。

***

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果物アレルギーの原因と症状

私の外来でも、果物アレルギーで相談されることが増えています。
そして、日本における食物アレルギーの7位に位置づけられています。[3]。

文献3より引用

文献3より引用

そして特に、7歳から増えてくるといえそうです。

文献3より引用

文献3より引用

果物アレルギーは、キウイフルーツが最も多く、バナナ、モモ、リンゴ、サクランボのが多いとされており、今回のびわは比較的稀なケースといえます[4]。

果物アレルギーには、

1) 果物そのもののタンパク質に対するアレルギーと、

2) ある花粉に対するアレルギーを獲得し、それに近いアレルゲンを持っている果物に症状が起こるというアレルギーがあります。

後者は、花粉食物アレルギー、英語でPollen food allergy syndrome(PFAS)といい、『ピーファス』などと呼ばれています[4]。

イラストAC・DALL-E3で作成したイラストを元に、筆者作成

イラストAC・DALL-E3で作成したイラストを元に、筆者作成

アレルギーになりやすい花粉は、61種類あり、そのうちの一つまたは複数の花粉に対してアレルギーを獲得し、その花粉のタンパク質に近いタンパク質を持つ果物や野菜に対して花粉食物アレルギー症候群、PFASを発症する可能性があるのです。

例えば、シラカバやハンノキの花粉に対してアレルギーが強い方に対しては、リンゴやモモアレルギーが起こることが多いとされています。

びわアレルギーとPFASの特徴

PFASの場合、口の中が痒くなったり、口周りが赤くなったりといった症状が主になります。一方、果物そのもののタンパク質に対するアレルギーの場合、全身的な症状が出ることが多いです。

では、今回のびわに関してはどちらの可能性が高いと考えられるでしょうか?

これまでの報道から判断すると、PFASの方が可能性が高いのではないかと思います。PFASに関しては、一般的に花粉に対してアレルギー反応が起こった後に、その果物アレルギーが発症する可能性が高いとされています。

びわアレルギーはなぜ起こる?

びわに関しても、りんごと同様にシラカバやハンノキの花粉に対するアレルギーを持つ方が反応しやすいことがわかっています。

シラカバやハンノキの花粉にアレルギーのあるひとは、バラ科の果物である、リンゴ、モモ、サクランボ、ナシなどにもPFASを起こしやすくなります

今回の報道にあった富士吉田市の『市の木』はシラカバなのだそうです[5]。

富士吉田市のプロフィールから、筆者作成 https://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/div/kikaku/pdf/rokujyuu/guide/_3-1.pdf

富士吉田市のプロフィールから、筆者作成 https://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/div/kikaku/pdf/rokujyuu/guide/_3-1.pdf

すなわち、『シラカバ花粉にアレルギーになっているひと』が多い地域である可能性があります。

しかし、ここで少し疑問に思うことがあります。というのは、びわアレルギーを持つ方は一般的にシラカバやハンノキ花粉に対してアレルギーを持っていることが多いでしょう。

ということは、それであれば同じバラ科の果物であるリンゴやモモ、イチゴやナシなどにも反応することが多いはずです。

今回のようにびわだけで症状が出たというのは、少し不思議ですよね。

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続きは、2439文字あります。
  • ビワアレルギーの子どもが多く発症した背景を推測してみると
  • ビワアレルギーの検査
  • ビワの種とシアン化合物
  • 参考文献

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