胃腸炎が、うつ病の発症に影響するってホント?

胃腸炎と心の病気は関係がないように見えますが、近年の研究で「腸と脳」が深く結びついていることがわかってきました。実は、胃腸炎のあとにうつ病などの精神疾患を発症しやすくなる可能性も指摘されています。本記事では、そのメカニズムと胃腸炎予防の大切さを解説します。
堀向健太 2025.03.27
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感染性胃腸炎が流行しています[1]。

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/gastro/gastro/

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/gastro/gastro/

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が腸に感染して、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などを起こす病気です。最も多い原因はウイルスで、細菌ではサルモネラ菌や大腸菌なども原因となります。

本来、これらの胃腸炎は脱水にならないように心がけていくと多くは自然に改善します。

しかし、これらの胃腸炎を繰り返し罹ったり、重症になったりすると、その後、心の健康にも影響するという研究結果が増えています。でも、そもそも脳と腸、すごく離れている場所にありますよね。

なぜそのようなことが考えられているのでしょうか?

脳と腸をつなぐシステムとは

私たちの脳と腸は、お互いに情報をやり取りしています。
これを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼びます[2]。

脳腸相関では、次の3つのルートがあります。

  • 神経系
     特に重要なのが「迷走神経(めいそうしんけい)」です。
    この神経は脳と腸をつなぐ高速道路のような働きをしていて、腸内にあるセロトニンやGABA(ギャバ)、ドーパミンなどの神経伝達物質を脳へ届けると考えられています[3]。
    ちなみにセロトニンは、私たちの気分や感情を調整する、俗に「幸せホルモン」などとも呼ばれる物質、GABAは、脳の中で「ブレーキ」のような役割をする物質、ドーパミンは俗に「報酬物質」とも呼ばれる神経伝達物質です。

  • 内分泌系
     腸内細菌は、短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)という物質を作り、血液を通じて脳に影響を与える可能性が示唆されています[4]。
    短鎖脂肪酸は、私たちが食べた食物繊維などが、腸内の細菌によって分解されてできる物質です。また、ストレスで分泌されるホルモン(コルチゾールなど)も、脳と腸の相互作用に関わっています。

  • 免疫系
    腸は体を守る大きな免疫器官でもあります。
    胃腸炎で腸に炎症が起こると、炎症性サイトカインという物質が作られ、全身や脳にまで影響すると考えられています[5]。

炎症性サイトカインは、私たちの体の免疫システムで重要な役割を果たす小さなタンパク質で、体が感染症や怪我に対して防御するときに、細胞から放出される「メッセンジャー」のようなものです。そして脳からの信号も、免疫系を介して腸の状態に影響を与えることが知られています。

すなわち、「脳と腸が3つのルートで結びついている」ということ、そこに腸内細菌が関わっているということです。

ClaudeとイラストACから筆者作成

ClaudeとイラストACから筆者作成

  

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