【溶連菌理解】増えている『侵襲性溶連菌感染症』。なぜ増えている?予防は?対策は?

死亡率の高い『侵襲性溶連菌感染症』が日本を含む世界各地で急増しています。最近、妊産婦の死亡事例が報道され、心配される方も多いかもしれません。そこで、一般的な溶連菌感染症との違いや、症状、治療法、感染予防のための対策について解説します。
堀向健太 2024.07.16
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最近、『侵襲性溶連菌感染症』が、海外、そして日本でも増えています[1][2]。『侵襲性溶連菌感染症』とは、溶連菌感染症のなかでも特に重症化した病態です。

この現象は、他の感染症でも見られています。それが溶連菌感染症にも拡大し、しかも重症化しているひとも増えているということです。

侵襲性A群連鎖球菌感染症は、すべての年齢の方に起こり得ます。そして最近、2024年3月までの9ヶ月間に、5人の妊産婦の方が亡くなられたという報道もありました[3]。

そこで今回は、侵襲性溶連菌感染症に関してお話をさせていただきたいと思います。

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侵襲性溶連菌感染症と一般的な溶連菌感染症の違い

侵襲性溶連菌感染症と一般的な溶連菌感染症は全く異なる様相となります。

一般的に溶連菌感染症は、主にのどや皮膚など、体の表面の限られた部分の感染を起こします。

典型的な症状はふたつ挙げられるでしょう。

ひとつは、喉の痛み、扁桃腺の腫れ、発熱などがあります。これは「咽頭炎」と呼ばれる状態です。
ふたつめは、皮膚に感染すると伝染性膿痂疹、いわゆる「とびひ」と呼ばれる状態です。

これらの症状は、多くの場合、適切な抗生物質治療で数日から1週間程度で改善します。

しかし、溶連菌は体の表面だけではなく、血液であったり、皮膚よりも深い組織に潜り込んでいって、身体の中の重要な臓器まで侵入し重篤な状況を起こし、亡くなる方もでてきます。

これが侵襲性溶連菌感染症です。

米国の報告では、10万人当たり年間3.8人と推定されていますが、増えているのが今の状況といえます。なお、侵襲性溶連菌感染症がさらにひどくなった場合、劇症型溶連菌感染症と言います。

侵襲性溶連菌感染症の特徴

PhotoAC

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すなわち、本来は無菌的な、菌がいない場所に侵入し、重症の感染症を起こすのが侵襲性溶連菌感染症です。

たとえば、溶連菌が血液の中に侵入すると敗血症という状況を起こします。

敗血症は熱がすごく高くなるだけではなくて、悪寒、頻脈、さらにひどくなってきて意識レベルが下がり、全身状態が急速に悪化していくことになります。

さらに肺の方に溶連菌が入ってくると、重症の肺炎などを起こすことがあります。

そして恐ろしいのは、壊死性筋膜炎です。

これは溶連菌が皮膚の下の組織に侵入していって、急速にその周辺の組織を破壊していくという病気です。

激しい痛み、腫れが起こり、そして皮膚の色が変わり、適切な治療を行わないと数時間のうちに致命的な状態に陥る可能性もあります。場合によってはその場所の皮膚を切開したり、切開では不十分で、手足を切断しないといけないような場合も起こりえます。

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続きは、6712文字あります。
  • 侵襲性溶連菌感染症の治療と世界的な増加傾向
  • 侵襲性溶連菌感染症増加の原因は?
  • 免疫負債の影響(解釈に注意)
  • 溶連菌は『変異』している
  • 新たな溶連菌系統の特徴
  • 一般的な溶連菌感染症のうちに治療をすれば?
  • ワクチン開発の現状

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