「フルミスト」の危険な使い方と副反応とは?【フルミスト徹底解説 後編】
インフルエンザが流行し始めた小児科外来で始まった「フルミスト」のレクチャー。さらに今回は、「禁忌(使ってはいけない)」や「要注意」のパターンに関して解説していきます。
後半は実践編。でも、前半を読んだあなたなら、「なぜなのか」が理解できるはず。
一緒に学んでまいりましょう!
※前編はこちら(メールアドレス登録後に無料閲覧できます)。
【インフル対策】フルミストと注射の「根本的な違い」とは?【フルミスト徹底解説 前編】
絶対に接種してはいけない「禁忌」と「要注意」
ChatGPTで作画
A先生「ここからが特に重要だと思いますが、接種してはいけない、いわゆる『禁忌』について詳しく教えてください。」
ほむほむ先生「非常に重要だね。まず、日本の添付文書で『禁忌(接種不適当者)』とされているのは、発熱している方、重篤な急性疾患にかかっている方、過去に本剤の成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方、明らかな免疫不全や免疫抑制治療を受けている方、そして妊娠している方などになっている[15]。これらに該当する場合は接種できないんだ。」
卵アレルギーは「禁忌」?「慎重接種」?
ChatGPTで作画
A先生「先生、ちょっと待ってください。アレルギーというと、よく『卵アレルギー』は禁忌だと聞くんですが、それはどうなんでしょうか?」
ほむほむ先生「ああ、A先生、とても大事なポイントに気づいたね。実は、その『卵アレルギー=禁忌』という認識は、国や基準によって扱いが違うという、ややこしいことになっているんだ。」
A先生「えっ、国によって違うんですか!?それは...保護者の方に説明するときに困りますね...。」
ほむほむ先生「そうなんだよね。まず、日本の添付文書を見てみよう。日本では『本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがある者』が禁忌になっている[15]。つまり、卵そのものが名指しで禁忌にされているわけではないんだね。」
A先生「じゃあ、卵アレルギーがあっても接種できるんですか?」
ほむほむ先生「そこが慎重な判断が必要なところで、日本の添付文書では『本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある者』は『接種要注意者(=慎重接種)』とされています[15]。つまり、一律ダメではなく、リスクを評価して慎重に判断しましょう、という立場だね。」
A先生「なるほど。日本では『絶対禁忌』ではないけれど『慎重接種』...。では、海外ではどうなんですか?」
ほむほむ先生「例えば欧州(EMA)では、『卵または卵タンパク(例:オボアルブミン)に対する重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)』は禁忌として明記されている[16]。」
A先生「欧州は重度なら禁忌、とはっきりしているんですね。アメリカはどうでしょう?」
ほむほむ先生「米国はさらに少し複雑なんだよね。FDA(食品医薬品局)のラベル(添付文書)上は、欧州と似ていて『本剤成分(卵タンパクを含む)による重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)既往』は禁忌とされている[17]。ところが、実際にワクチン接種の現場で使われるACIP(予防接種諮問委員会)の実務勧告では、2023-24シーズン以降、『卵アレルギーのみの場合は、追加の安全対策は不要で、どのインフルエンザワクチンも接種可』とされているんだよね[18]。」
A先生「ええー!?ラベルでは禁忌なのに、運用上はOKなんですか?なんだか混乱してきました...。」
ほむほむ先生「まあ、無理もないよねえ。要するに、
-
日本は、『成分アナフィラキシー』が禁忌で、『卵アレルギーのおそれ』は慎重接種 。
-
欧州は、『重度(アナフィラキシー)の卵アレルギー』は禁忌。
-
米国は、ラベル上は『重度の卵アレルギー』は禁忌だけど、実務上(ACIP)は『卵アレルギーのみ』なら接種可。
という整理になる。
だから、日本で診療する僕たちは、まず『卵アレルギー=一律禁忌ではない』こと、そして『慎重接種』の対象であるため、接種前に医師としっかり相談する必要がある、と説明するのが正確だね。そもそもがフルミストに含まれる鶏卵の蛋白量は1本あたり24ng未満、すなわち0.000000024 gというすごく少ない量だから[19]、個人的には「少量でも鶏卵を食べられる子どもならまず大丈夫」と考えているよ。」
A先生「ありがとうございます。複雑ですが理解できました!アレルギー関連では、他に注意すべき成分はありますか?」
ほむほむ先生「フルミストの成分として、ゼラチンなどに対して重篤なアレルギーがある方も禁忌対象になり得るね。特にゼラチンアレルギーは注意が必要だね。」
A先生「『適応なし』の年齢(2歳未満と19歳以上)はよく分かりました。では、アレルギー以外の基礎疾患で、臨床現場でよく注意点として挙げられる『喘息』については、どう整理できますか?」
この記事は無料で続きを読めます
- 喘息の子どもへの接種は?
- 抗インフルエンザ薬(タミフル等)との「干渉」
- アスピリン、妊娠・授乳中などの注意点
- ワクチンウイルスの「排出」と「副反応」 周りの人やペットにうつる?
- どんな副反応がある?
- よくある疑問 Q&A
- 注射とフルミスト、どう選ぶ?
- まとめ
- 参考文献(前編の文献も含む)
すでに登録された方はこちら
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績