急増する木の実類アレルギー。その理由は?

クルミやカシューナッツなどの木の実アレルギーが、子どもを中心に増えています。様々な理由が考えられますが、最新の調査や研究をもとに、なぜ木の実アレルギーが増えているのかをわかりやすく解説します。
堀向健太 2025.02.25
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日本では、クルミやカシューナッツなど「木の実(ナッツ)」によるアレルギーがこの10年ほどで大きく増えています。消費者庁の全国調査では、食物アレルギー全体のなかで、木の実類を原因とする即時型食物アレルギー(食べた後すぐ起こる食物アレルギー)は24.6%(1,484例)を占めており、鶏卵に次ぎ、食物アレルギーの原因の2位になっています[1]​。

さらにクルミは、単独でも2021年度に卵、牛乳、小麦に次ぐ第4位、そして2024年度には2位となり、主要なアレルゲンのひとつになりました[1]。クルミが2位というのは驚きですね。

さらに、カシューナッツは前回の2.9%から4.6%、マカダミアナッツは0.7%から1.1%、ピスタチオは0.4%から0.8%、ペカンナッツは0.3%から0.6%といった増加しています[1]。

こうした状況を受け、2025年1月現在,クルミは義務表示対象品目(特定原材料)の8品目の一つに加わり、カシューナッツも近く義務表示に移行する方針が示されています[2]。また,2019年にアーモンドが特定原材料に準ずるものとして追加され,2024年にはマカダミアナッツが加わるなど,木の実類の表示義務拡大が進められています。

また、この増加は特に子どもに多いことがわかっています。すなわち、幼児から学童までに木の実類でアレルギーを起こす子が増えています。

アレルギー専門医の私の外来にも、紹介患者さんが増えています。

代表的な木の実アレルギーと、その症状は?

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木の実類アレルギーの症状は、ほかの食物アレルギーと同じく、じんま疹やかゆみ、唇やまぶたの腫れ、嘔吐、下痢、咳、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)などが起こります。

木の実類は少しの量でも強い反応が出やすく、全身に症状が広がるアナフィラキシーになることも少なくありません[3][4]。また、木の実類のアレルギーは卵や牛乳と比べて自然に治りにくい傾向があると考えられています [4] 。

木の実アレルギーには「交差反応」がみられることがあります。クルミを食べて症状が出る人は、近い種類のペカンナッツで反応する可能性があり、カシューナッツに反応する人はピスタチオでも症状が出るかもしれないという報告があります[5]。

ただし、木の実類全体としては、「この木の実が食べられるから、別の木の実も大丈夫だろう」とは全く言えないので、注意が必要です。

なぜ、木の実類アレルギーが増えている?

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なぜこんなにも木の実類アレルギーが増えているのでしょうか?

すべてが明らかになったわけではありませんが、いくつかの理由が複合して起こっていると考えられています。

まず、日本人の食生活が欧米化し、木の実を日常的に食べる機会が増えたことが挙げられるでしょう。農林水産省の統計によると、クルミの国内消費量は1985年に約7,000トンだったのに対し、2020年には約56,000トンと8倍にもなりました[6]。

すなわち、木の実類入りのお菓子やグラノーラ、サラダ用トッピングなどで手軽に食べられるようになったことが、アレルギー発症者の増加につながっていると考えられます。

また、環境の変化もアレルギー全体を増やす要因とされています。衛生状態の向上で子どもが細菌やウイルスに触れる機会が減り、アレルギー体質を獲得しやすくなるという「衛生仮説」が想定されています[7]。また、大気汚染物質がアレルギーを引き起こしやすい体質をつくっている可能性も指摘されています[8]。

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続きは、3664文字あります。
  • 食生活の変化によって、ホコリの中に含まれる木の実類が増えた?
  • 食品業界や外食でも、木の実類の使用が拡大
  • 木の実アレルギーへの対策と今後の課題
  • まとめ
  • 参考文献

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