お酒を飲むと顔が赤くなる人は発がんリスクが高い?飲酒と発がんの関係
日本人の場合、飲酒時に顔が赤くなる人が多いことがわかっています。これはアルコールを分解する酵素「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」の働きが弱いためで、少量の飲酒でも健康への影響が大きくなりやすいことが指摘されています [1][2]。
また、また、「お酒は適度ならば体に良い」というイメージがある一方、少量でも発がんリスクが高まる可能性を示す研究もあり、さらに飲酒と喫煙を併用すると発がんリスクが大きく高まることがわかってきました[3][4]。
しかし、多くの人は、タバコに発がん性があると知っていても、飲酒に発がん性があるとは思っていないようです。米国民の93%がタバコに関連するがんリスクを認識しているのに対し、アルコールの場合は39%に過ぎないという報告もあります[5]。
もちろん、子どもの飲酒は論外ですが、親御さんが早くにがんになるリスクが上がると思うと、心配ですよね。
そこで今回は、飲酒とがんリスクの関係、さらに「フラッシング反応」のある人のリスク、飲酒と喫煙の相乗効果など、深堀りしましょう。
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飲酒は適量でも発がんリスク?
日本では「お酒は百薬の長」ということわざがあるように、昔から「適度な飲酒は健康に良い」と信じられてきました。
しかし、厚生労働省などが示す研究では、適量と思えるような飲酒であっても発がんリスクの上昇があることが報告されています[1]。そして世界保健機関(WHO)の関連団体である国際がん研究機関(IARC)は、アルコールをヒトに対する発がん性「グループ1」に分類しています [6]。
たとえば、1日あたりビール中瓶1本ほど(純アルコール量23g前後)でも、口腔・咽頭がんや大腸がんのリスクが上がるという報告があります。
日本の大規模なコホート研究(JPHC研究)では、週に1回以上飲酒する男性で口腔・咽頭がんの罹患リスクが1.8倍に増加し、さらに飲酒量が多い場合(週にエタノール300g以上)では3.2倍に上昇することが確認されています[7]。
大腸がんに関しても、1日あたり純アルコール摂取量が23g以上の飲酒習慣がある男性で、飲酒しない人と比較してリスクが1.4倍に増加することが報告されています。女性でも同様に、23g以上の飲酒でリスクが1.6倍に上昇することが確認されています[8]。
飲酒時に顔が赤くなる人は、さらにリスクが高い?
イラストAC
日本人の約40%は、飲酒後に顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こしやすい体質とされています。アルコールは主に肝臓で分解され、まずはアセトアルデヒドという毒性の強い物質に変換されます。
ふつうは「ALDH2」という酵素が働いて、アルコールを分解しますが、ALDH2の働きが弱い体質の場合、このアセトアルデヒドが体内に長く留まりやすいのです[1][2]。アセトアルデヒドはDNAを傷つけ、細胞の修復を妨げる作用があるため、がんリスクを高める原因になることがわかっています。
ALDH2の活性には3つのタイプがあります。
ALDH2が正常に働き、アセトアルデヒドを速やかに分解できる活性型(NN型)。ALDH2の活性が通常の約1/16程度の低活性型(ND型)。ALDH2が全く働かない不活性型(DD型)です。低活性型(ND型)が日本人の40%、不活性型(DD型)は4%にあたります[9]。
特に、不活性型(DD型)の人はビールコップ1杯でも強いフラッシング反応が起こり、ほぼ100%の確率で顔が赤くなるとされています。
フラッシング反応がある、つまりALDH2活性が低い人は、飲酒により食道がんなど上部消化管がんのリスクが大きく高まると考えられています。
ある研究では、ALDH2活性が低い人は、ALDH2が正常に働く人と比べて10倍以上、さらに喫煙も加わるとさらに上昇するという報告があります[10]。