特効薬であるはずの抗菌薬が効かない?『耐性マイコプラズマ』への対策は?
現在、8年ぶりにマイコプラズマ肺炎の流行が拡大しています[1]。
マイコプラズマ肺炎の原因になるのは、マイコプラズマ・ニューモニエという病原体であり、「マクロライド系抗菌薬」が特効薬です[2]。
しかし、その特効薬であるはずのマクロライド系抗菌薬が、マイコプラズマに効果が上がらないケースがあります。
そのような『耐性マイコプラズマ』の解説をしたいと思います。
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マイコプラズマに対する抗菌薬は、どれを選ぶ?
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マイコプラズマは、細胞壁という細胞の壁を持ちません[3]。
抗菌薬の名前として、ペニシリンという名前は聞いたことがあるでしょう。ペニシリンは、β-ラクタム系抗菌薬という仲間です。β-ラクタム系抗菌薬は、細胞壁を壊したり、作るのを邪魔するような作用があります。
しかし、マイコプラズマは、そもそも細胞壁を持ちませんので効果がありません。
そこで、細胞壁を持たないマイコプラズマに対する特効薬がマクロライド系の抗菌薬です。
マクロライド系抗菌薬は、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどさまざまな薬があります。
耐性マイコプラズマの出現と流行
ただ、本来は特効薬であるはずなのマクロライドに効果が低い、もしくは効果がない耐性菌であるマイコプラズマが出現しています。
日本で耐性マイコプラズマが見つかったのは2000年とされています[5]。
そして2008年から2012年にかけて、日本を含む東アジアを中心にマクロライドが効きにくいマイコプラズマの感染症が大きく流行しました[6]。
そうしてさらに、2011年の秋から日本でマイコプラズマ感染症が爆発的に増えました。このような背景をもとに、マイコプラズマ肺炎に対する治療ガイドラインが改定されました[7]。
2000年以降のマイコプラズマの耐性化
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2011年から2012年の流行期に、耐性マイコプラズマが調査されました。
その結果、実に80%以上のマイコプラズマがマクロライド耐性であると報告されたのです。
これは大変深刻な状況でした。
しかし2013年から2015年にかけて、その耐性マイコプラズマ感染症の割合が少なくなってきました。2016年には65.3%、そして2018年には14.3%まで減少したと報告されています[8][9]。
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- 現在の耐性マイコプラズマは?
- 耐性マイコプラズマへの対応
- 耐性マイコプラズマへ使用される抗菌薬
- 耐性マイコプラズマに使用される、2系統の抗菌薬の治療効果
- 今後の展望
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