特効薬であるはずの抗菌薬が効かない?『耐性マイコプラズマ』への対策は?

マイコプラズマ肺炎が8年ぶりに流行しています。そのようななかで、特効薬であるはずの『マクロライド系抗菌薬』が効かない耐性マイコプラズマが出現しています。子どもだけでなく、そのご家族も耐性マイコプラズマのリスクを知っておく必要性があるでしょう。そこで今回は、小児科医がどのように考えながらマイコプラズマに対応しているか、深堀り解説します。
堀向健太 2024.08.22
読者限定

現在、8年ぶりにマイコプラズマ肺炎の流行が拡大しています[1]。

東京都感染症情報センター:マイコプラズマ肺炎の流行状況

東京都感染症情報センター:マイコプラズマ肺炎の流行状況

マイコプラズマ肺炎の原因になるのは、マイコプラズマ・ニューモニエという病原体であり、「マクロライド系抗菌薬」が特効薬です[2]。

しかし、その特効薬であるはずのマクロライド系抗菌薬が、マイコプラズマに効果が上がらないケースがあります

そのような『耐性マイコプラズマ』の解説をしたいと思います。

***

このニュースレターでは、さまざまな子どもやアレルギーに関する医療情報を豊富な出典に基づき配信しています。継続的に記事を受け取りたい方は、 メールアドレスを登録していただくことで 次回以降 メールで記事を お届けすることができます。よろしければご登録をよろしくお願いいたします。

マイコプラズマに対する抗菌薬は、どれを選ぶ?

PhotoAC

PhotoAC

マイコプラズマは、細胞壁という細胞の壁を持ちません[3]。

抗菌薬の名前として、ペニシリンという名前は聞いたことがあるでしょう。ペニシリンは、β-ラクタム系抗菌薬という仲間です。β-ラクタム系抗菌薬は、細胞壁を壊したり、作るのを邪魔するような作用があります。

しかし、マイコプラズマは、そもそも細胞壁を持ちませんので効果がありません。

そこで、細胞壁を持たないマイコプラズマに対する特効薬がマクロライド系の抗菌薬です。

マクロライド系抗菌薬は、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどさまざまな薬があります。

耐性マイコプラズマの出現と流行

ただ、本来は特効薬であるはずなのマクロライドに効果が低い、もしくは効果がない耐性菌であるマイコプラズマが出現しています。

日本で耐性マイコプラズマが見つかったのは2000年とされています[5]。
そして2008年から2012年にかけて、日本を含む東アジアを中心にマクロライドが効きにくいマイコプラズマの感染症が大きく流行しました[6]。

そうしてさらに、2011年の秋から日本でマイコプラズマ感染症が爆発的に増えました。このような背景をもとに、マイコプラズマ肺炎に対する治療ガイドラインが改定されました[7]。

2000年以降のマイコプラズマの耐性化

PhotoAC

PhotoAC

2011年から2012年の流行期に、耐性マイコプラズマが調査されました。
その結果、実に80%以上のマイコプラズマがマクロライド耐性であると報告されたのです。

これは大変深刻な状況でした。

しかし2013年から2015年にかけて、その耐性マイコプラズマ感染症の割合が少なくなってきました。2016年には65.3%、そして2018年には14.3%まで減少したと報告されています[8][9]。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、7140文字あります。
  • 現在の耐性マイコプラズマは?
  • 耐性マイコプラズマへの対応
  • 耐性マイコプラズマへ使用される抗菌薬
  • 耐性マイコプラズマに使用される、2系統の抗菌薬の治療効果
  • 今後の展望

すでに登録された方はこちら

提携媒体・コラボ実績

サポートメンバー限定
お酒を飲むと顔が赤くなる人は発がんリスクが高い?飲酒と発がんの関係
誰でも
ヒトメタニューモウイルスって何?日本でも流行する?
読者限定
今年のインフルエンザワクチンの型は一致しているの? そもそも「一致」っ...
サポートメンバー限定
「ストレスで白髪になる」といううわさ、本当ですか?
サポートメンバー限定
スナック菓子や加工肉は癌になる?メカニズムと対策を論文ベースで解説
サポートメンバー限定
炭酸水にダイエット効果はあるの?
読者限定
「今年のインフルエンザは症状が異なる」ってホント?
誰でも
毒キノコじゃなくても危険!?市販キノコによる中毒?