ピアノを習うと知能や運動能力が上がるって、本当?

幼児期から小学生にピアノを習わせると、知能や運動能力が高まるとよく言われます。でも、実際にはどこまでエビデンスがあるのでしょうか。今回は、最新の研究をもとに、ピアノがIQや手先の器用さに影響するのかを、論文を元に解説します。
堀向健太 2025.02.27
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幼児から小学生にかけてピアノを習うと、「頭が良くなる」「手先が器用になる」と言われることがあります。実際に知能指数(IQ)が上がるのか、あるいは手の動きが良くなるのか、多くの研究がおこなわれてきました。

そういえば、むかーし、私もピアノを習っている時期が少しだけありましたが、あまりに壊滅的に苦手だったので、まったく上手にはなりませんでした。

それはともかく、これらを研究をまとめると、どのような結果になるでしょうか?

ピアノ学習はIQを高める?

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「ピアノなど音楽を習うと賢くなる」という説は昔から注目されてきました。

2004年にSchellenbergが発表した有名な研究では、6歳の子ども144人をピアノレッスン、声楽レッスン、演劇レッスン、何もしない群にわけて1年間学習してもらい、IQがどう変化するかを調べました[1]。

すると、ピアノや声楽を習った子は、演劇レッスンや何もしない子よりもIQが少しだけ高くなりました[1]。上がり幅は平均で約2.7ポイントと、小さめですが効果はあったと報告されています[1]。

ただし、その後の再検討では、ピアノと声楽の効果を分けてみると統計的に有意ではなく、音楽レッスンだけの特別な効果とは言いがたいという指摘もあります[2]。

また、Costa-Giomiが行った長期研究でも3年間ピアノを習っても学力や認知機能が長期的には上がらなかったという報告があります[3][4]。

逆に、Rauscherらの研究では、音楽訓練が空間認知(ブロックなどを組み立てる力)を高めるかもしれないという結果が出ています[5]。

効果があるとした大規模な研究としては、Schellenbergの調査があります。音楽レッスンを長く続けている子どもほどIQや学校の成績が高い傾向が見られたのです[2]。レッスンを1か月続けるごとにIQが約0.2ポイント上がり、6年間で合計7.5ポイントほど上がるという試算も報告されています[2]。

ただし、この研究は観察研究なので、もともとIQが高い子どもが音楽を選ぶ可能性も完全には否定できません。

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