破傷風のワクチン不足報道で心配な方に。大雨や台風の後に気をつけたい感染症の話
(カタカタ…)研修医のA先生が、少し強張った表情でノートパソコンの画面を見つめています。そこに指導医であるほむほむ先生が、マグカップを片手に優しく声をかけました。
ほむほむ先生「A先生、なんだか難しい顔をしているね。何か気になるニュースでもあったかい?」
A先生「あ、ほむほむ先生!お疲れ様です。いえ、ニュースを見ていたら、破傷風のワクチンが出荷停止になったと知って…[1]。日本救急医学会も注意を呼びかけているみたいで、なんだか不安になってしまったんです。夏は肌の露出も増えますし、最近はゲリラ豪雨や水害も多いじゃないですか。もし大きな怪我をした患者さんが運ばれてきたら…と思うと、胸がざわついてしまって。」
ほむほむ先生「そっかそっか、確かにあのニュースは医療現場にとっても、一般の方々にとっても心配になる話題だよね。ワクチンの安定供給が止まるというのは大きな問題だからねえ。でも、こういう時こそ医療従事者が知識を持って、冷静に対応することが大切だよ。」
A先生「知識…ですか。」
ほむほむ先生「例えば、破傷風ってどんな病気か、ワクチンの効果はどれくらい続くのか、そして、ワクチン不足の今、僕たちが最も注意すべきことは何か。この機会に、水害と感染症という大きなテーマも含めて、一緒に復習してみようか。きっと、A先生の不安も軽くなるはずだよ。」
A先生「はい!ぜひ、お願いします!こういう時だからこそ、しっかり学びたいです。」
本記事を最後まで読めば、
・破傷風のワクチン不足、今どうすればいい?
・破傷風ワクチンの効果ってどのくらい続くの?
・大雨の後に気をつけるべき病気って?
これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。
破傷風ワクチン出荷停止の今、私たちができること

ChatGPTで作画
A先生「先生、まず一番気になるのは、ワクチンの出荷停止についてです。やはり影響が大きいのでしょうか?」
ほむほむ先生「うん、もちろん影響は少なくないよね。特に救急や外科の現場では、これまで怪我をした患者さんには積極的にワクチン(破傷風トキソイド)を接種してきたから、その供給が不安定になるのは大きな痛手だよ。だからこそ、日本救急医学会も『けがをしたときは入念に傷口を洗浄するように』と、基本に立ち返るよう呼びかけているんだ[1]。」
A先生「洗浄、ですか。当たり前のことのようですが、そんなに重要なんですね。」
ほむほむ先生「ものすごく重要だよ。破傷風菌は土の中に潜んでいる嫌気性菌、つまり酸素が嫌いな菌なんだ。だから、傷口が深くて汚れていると、その奥で増殖しやすい。でも、傷口を水道水でしっかりと洗い流して、土や砂、異物を除去すれば菌が定着するリスクを、ゼロではないものの下げられる。これこそが、ワクチンと同じくらい、大切な予防策なんだよ。」
A先生「なるほど…!まず物理的に菌を取り除くことが肝心なんですね。患者さんにも、その重要性をしっかり伝えなくちゃいけないですね。」
ほむほむ先生「その通り。特に、お子さんが公園で転んだり、ガーデニング中に手を切ったりした時なんかは、すぐにきれいな水で洗い流すよう、お父さんお母さんに伝えてあげてほしいな。」
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