ビタミンDがアレルギーの予防に働く?専門医が解説

最近、子どものアレルギーに悩むご家庭が増えています。その一方で、現代の日本人の多くが「ビタミンD」不足という事実をご存知でしょうか?一見無関係に思えるこの二つですが、実は深い関わりがある可能性が指摘されています。そこで今回は、ビタミンDとアレルギーの気になる関係を分かりやすく解き明かしていきます。
堀向健太 2025.09.16
読者限定

今月3本目の配信です。
最近の記事は「専門医学雑誌の総説レベル」の内容を盛り込んでいて、それを医療者以外の方に、どのようにお届けするかに頭を悩ませています。
さて、今回も本文のみでも9000文字、全体で15000文字の記事をできるだけ分かりやすくお届けします。本記事は、数日間ほど無料公開、その後はサポートメンバー限定に変更となります。無料記事も定期的に配信しておりますので、よろしければ一緒に勉強してまいりましょう。


さまざまな読者の方々、さらには専門医の先生方からのコメントに励まされています。ありがとうございます!その一部を取り上げさせて頂きます。

🔬🍄わかばひふ科クリニック公式
@wakaba_hifuka2
こちらも大作です。

というかこれ1本読むだけで専門家向けの最新情報まで一気にフォローできるのですが、凄すぎません?

皮膚科小児科医だけではなく、全ての赤ちゃん持ちの保護者さんに読んでもらいたい資料です!!!
ほむほむ@アレルギー専門医 @ped_allergy
【ニュースレター更新】 「新生児からの保湿はアトピー予防に効果がない?」なんて研究も出てきて、混乱しているこのテーマの「現在の到達時点」はどこなのでしょうか? 最新の研究結果までを全部ひっくるめて、この論争の経緯と「今、推奨されるスキンケア」を深堀り解説します。 👉リンクは下に。 https://t.co/g96ZMU9R45
2025/09/11 07:21
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こどアレ
@kodoare
『新生児からの保湿、結局どうなの?
アトピー予防の大論争に専門医が答える』

ほむほむ先生が『論争の経緯と「今、推奨されるスキンケア」を深堀り解説』されてます✨今回もすごい内容ですので、ぜひお読み下さい✨

キーワードは『開始するタイミングと期間、使う保湿剤の種類、ケア方法が重要』
ほむほむ@アレルギー専門医 @ped_allergy
【ニュースレター更新】 「新生児からの保湿はアトピー予防に効果がない?」なんて研究も出てきて、混乱しているこのテーマの「現在の到達時点」はどこなのでしょうか? 最新の研究結果までを全部ひっくるめて、この論争の経緯と「今、推奨されるスキンケア」を深堀り解説します。 👉リンクは下に。 https://t.co/g96ZMU9R45
2025/09/11 09:54
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わいわい
@_wa2wa2_
我が子はまだ現在アトピーの様子がないけれども、遺伝的には発生する可能性も考慮しておかなければいけない。
我が子の状況に合わせた「賢い洗浄」、親子に負担無い範囲での「ソークアンドシール」習慣化など、これから赤ちゃんの肌を守りたい人は読んでおいて損はない👍
ほむほむ@アレルギー専門医 @ped_allergy
【ニュースレター更新】アトピー性皮膚炎では、「洗いすぎ?」「洗うべき?」と悩む場合があるかもしれません。 実は、現在は科学的根拠に基づく「賢い洗浄」が推奨されています。 今回は、肌のバリア機能を守りながら症状を改善に導く、アトピーの洗浄戦略を解説します。 👉リンクは下につなげます。 https://t.co/D3GB8OldiU
2025/09/08 12:02
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***

ある日の午後、研修医のA先生が少し考え込んだ表情で、指導医であるほむほむ先生のもとへやって来ました。

A先生「ほむほむ先生、少しよろしいですか? 先日、『乳児のビタミンD欠乏が増えている』という特集を見たんです[1]。日本小児科学会がビタミンDのサプリメントを推奨し始めた、という内容で…。今までお母さんたちには『赤ちゃんの日焼け対策はしっかりと!』と指導してきたので、なんだか真逆の話に頭が混乱してしまって。それで、改めて思ったんですけど、毎日診ているアトピー性皮膚炎の赤ちゃんたち…。もしかして、このビタミンD不足がアレルギーの増加と何か関係しているんじゃないかって。」

ほむほむ先生は、頷きました。「A先生、素晴らしい着眼点だね。君が感じたその直感は、まさに今、世界中の研究者が探っている最前線のテーマなんだ。アレルギーとビタミンD…その二つには、実はつながりがあるんだよ」

本記事を最後まで読めば、
・ビタミンDが「骨」以外で果たす驚きの役割
 ・アレルギー予防とビタミンDの本当に重要な関係性
 ・今日からできる、賢いビタミンDの摂り方と注意点
 これらの疑問にお答えできるよう執筆しました。

なぜ?が増えるアレルギーの謎

ChatGPTで作画

ChatGPTで作画

A先生「ほむほむ先生、さっそくなんですが…最近、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんを診ることが本当に多くて。まずは基本から教えていただきたいのですが、ビタミンDって、そもそもどんな成分なんですか?」

ほむほむ先生「うん、ビタミンDのこと、知れば知るほど面白いよ。実はね、名前に『ビタミン』と付いているけど、その正体は体の中のいろんな機能を調整する『ホルモンの仲間』みたいな存在なんだ。まるでオーケストラの指揮者みたいに、様々な働きを裏で支えているんだよ」

A先生「ホルモンの仲間!? 指揮者ですか。骨を強くするイメージしかなかったです。患者さんにも『カルシウムと一緒にとると良いですよ』くらいしか…」

ほむほむ先生「そうだよね、もともとはカルシウムの吸収を助けて骨を丈夫にする働きで有名だからね。不足すると、お子さんなら『くる病』、大人だと『骨軟化症』を引き起こす。でも最近の研究で、それだけじゃなく、僕たちの免疫システムが正常に働くための『調整役』として、重要な役割を担っていることがわかってきたんだ[2][3]。ここが、今日のアレルギーの話につながる、大切なポイントだよ」

A先生「免疫の調整役…。なるほど。アレルギーについても、改めて基本的な仕組みをおさらいしてもいいですか?患者さんのお母さんにも分かりやすく説明できるようになりたくて」

ほむほむ先生「もちろん。アレルギーっていうのはね、本来は無害なはずの花粉やダニ、食べ物なんかに対して、体の免疫システムが『敵が来たぞ!』と勘違いして、過剰に攻撃を仕掛けちゃう状態のこと。その時に『IgE抗体』っていう、いわば“指名手配書”が作られて、体中のパトロール隊(マスト細胞)に配られるんだ。そして次に同じものが体に入ってくると、パトロール隊が一斉にヒスタミンっていう化学物質をばらまいて、くしゃみやかゆみを引き起こすんだ[4]。これが、もっとも基本的なアレルギー反応の正体だね。喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症も、みんなこの仲間といえる。もちろん、アレルギー反応はこれだけじゃないけど、まずは基本を抑えておこう」

世界のデータが示す「太陽」とアレルギーの不思議な関係

ChatGPTで作画

ChatGPTで作画

A先生「ありがとうございます、指名手配書とパトロール隊、イメージが湧きました! では、そのビタミンD不足とアレルギーの増加に、具体的にどんな繋がりが見えているんでしょうか?」

ほむほむ先生「うん、いくつか興味深い事実があるんだ。一つは『緯度との関係』。不思議なことに、日光が弱い高緯度の地域、つまり北欧みたいに赤道から遠い国ほど、喘息や食物アレルギーを持つ人が多い傾向が報告されているんだよ[5][6][7]」

A先生「えっ、日照時間ですか? まさかそんなことが関係しているなんて…。太陽の光がアレルギーに関係するなんて、考えたこともありませんでした」

ほむほむ先生「興味深いだろう? そこで、日光を浴びる時間が短いと、皮膚で作られるビタミンDが減るからじゃないか、と考えられるようになったんだ。もう一つは『生まれた季節との関係』だね。いくつかの研究で、秋冬生まれの赤ちゃんは、春夏生まれの子に比べて食物アレルギーやアトピー性皮膚炎のリスクが少し高い、という報告もあるんだ。これも、日照時間との関連が疑われる要因だね[8]」

A先生「生まれた季節まで…。ということは、妊娠中のお母さんの状態が関わっている、ということでしょうか?」

ほむほむ先生「その可能性もあるだろう。お腹の中にいる後半の時期や、生まれてすぐの免疫が作られる大切な時期が、日照の弱い冬と重なることで、お母さんも赤ちゃんもビタミンDが不足しがちになる。これが影響しているんじゃないか、という仮説があるんだ。そして、冒頭でA先生が言っていたように、日本人のビタミンD不足は本当に深刻だからね」

A先生「98%が不足、というのは本当なんですか? ちょっと信じがたい数字ですが…」

ほむほむ先生「それが本当なんだ。少し前に東京で行われた大規模な調査の結果なんだけど、参加した健康な方々の98%がビタミンD不足だったんだよ[8]。特に冬場は、ほとんどの人が『欠乏』レベルだったというから驚きだよね。妊婦さんを対象にした別の調査でも、約7割が欠乏状態で、その方たちはアレルギー症状を持つ割合が少し高かった、なんていうデータもある。日本のスギ花粉症の多さも、ひょっとしたら…と思ってしまうよね」

A先生「うわぁ…ほとんどの人が足りていないんですね。だとしたら、ビタミンDをしっかり補えば、アレルギーは予防できるんでしょうか?特に、生まれてくる赤ちゃんのために、妊娠中から何かできることはないか、お母さんたちによく聞かれるんです。これが一番知りたいところです」  

この記事は無料で続きを読めます

続きは、12641文字あります。
  • 「妊娠中から」じゃ遅いかも?アレルギー予防の新しい話題
  • ビタミンDは免疫の「名コーチ」?!
  • ビタミンDの物語は続く…長期追跡の結果と新たな可能性
  • 【実践編】太陽とごはんと、時々サプリ
  • ビタミンDとの上手な付き合い方とは?
  • まとめ
  • 参考文献

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